挑戦的萌芽研究(平成29年度)

日本語のユニバーサルデザイン化に関する研究

研究代表者氏名

社会福祉学部 講師 大野 ロベルト

研究課題

日本語のユニバーサルデザイン化に関する研究

研究結果の概要

盲ろう者のコミュニケーションのあり方は、盲ベースの全盲ろう、ろうベースの全ろう盲、盲ベースの弱視難聴・盲難聴、ろうベースの弱視難聴・弱視ろうでそれぞれ違う。弱視難聴の場合、日常会話では手話、読書は拡大読書器を使用するという人もいるが、聴力がある程度まであれば手話を習得せずに大人になることも多い。また拡大読書器を使えば読めていた人が、視力が悪化した場合、点字の習得に苦労することもわかった。手話にせよ、点字にせよ、早期修得が重要であり、これは視覚・聴覚障がいの療育に必須の要件であると思われるが、日本の視覚・聴覚障がいの教育・福祉の現場では十分に担保されていない。

不幸にして手話も点字も修得する機会がなく義務教育を終えてしまった弱視難聴の場合、高等教育を受ける際に書記日本語を読むことに苦労する。そして拡大文字と音声変換を併用するなどして本を読むことになる。これはストレスが大きく、学習をきわめて非効率的なものにしてしまうため、テキストデータ化は必須である。スキャナーbizhubC203とOCRソフト読取革命の組みあわせや、F1-7280とWin-reader PRO v.15.0の組みあわせがかなり有効であることがわかった。点字使用者はこれをブレイルセンサーで点字に変換すればよい。とはいえ、テキストに外来語のアルファベットが混じると文字化けを起こし、相当読みにくくなる点には留意が必要である。

また、弱視難聴がテキストを音に変換して聞く場合も、点字にする場合も、同音異義語はしばしばネックとなる。拡大読書器で墨字を読む場合には、同音異義語の問題はないが、一つのセンテンスが長いと、理解が難しくなったり、行を飛ばしてしまったりすることがある。

以上のように盲ろう者が書記言語を必要とするときには、ローマ字を混ぜないこと、センテンスが長くなり過ぎないこと、同音異義語や専門用語については説明を加えることが必要である。これは音素の少ない言語であり、なおかつ近代化以降にとくに学術分野で外来語の使用が爆発的に増えたという日本語の性質を考えれば、生ずるべくして生じた問題と言える。

日本語のユニバーサル化に関わるこのような問題は、いかにして解決されるべきだろうか。高等教育で使用される書物の場合、説明を付け加えたり、部分的にリライトしたりすることは可能だろうか。知的障がい者のためには難解な語彙にマークをつけ、リライトするソフトが開発されているが、そのような方法で盲ろう者用にリライトするソフトの開発は可能だろうか。また、そのような支援のあり方はそもそも好ましいだろうか。これらの点が今後の研究課題となるだろう。

研究成果の活用・提供予定

既に研究成果活用の一端として、現状で最も性能のよいOCR化の機器を導入し、人的パワーをほとんど必要としないOCR化を達成している。また研究のプロセスで得られた成果については、電子媒体にて公表する他、詳細を論文にまとめて紀要に発表する予定である。

研究成果物

時期区分による公立・私立児童養護施設の入所児実態の実証的研究

研究代表者氏名

社会福祉学部 准教授 佐竹 要平

研究課題

時期区分による公立・私立児童養護施設の入所児実態の実証的研究

研究結果の概要

本研究では、公立施設の1,485名の入所児を分析した結果以下のような特徴が導かれた。第1期では、入所児が「7歳~12歳」が最も多くなっている。第2期では、入所児は「1歳~6歳」が最も多くなっている。退所先で「里親」が43名と3番目となっている。「家庭養護センター」を設置し里親委託促進をはかる施策を展開した結果が表れている。

第3期では、虐待を受けた子どもの支援を中心に展開された時期である。入所の平均年齢も6歳5ヶ月とさらに低年齢となっている。退所の平均年齢も8歳6ヶ月、在所期間も2年6ヶ月と更に短くなっている。

民間施設の1,257名の入所児を分析した結果では、第1期では、入所児が「0歳~6歳」が圧倒的に多くなっている。退所先では、死亡が12名となっている。栄養状態や医療環境の厳しさの表れでもある。また里親が17名と全期間の65%がこの時期となっている。第2期では、入所児の退所年齢別では、「1歳~6歳」と「13歳~15歳」になっている入所して短い期間に退所するか、中学を卒業して退所するかの二分化される結果となっている。第3期では、児童虐待防止法が施行され、虐待を受けた子どもの入所が増加した時期である。「7歳~12歳」の入所が増加している。退所の平均年齢が12歳5ヶ月と高年齢化となっている。

また、全体に公立児童養護施設と比べ民間児童養護施設としての特徴も表れていた。

研究成果の活用・提供予定

実績

日本社会福祉学会第63回秋期大会 ポスター発表

予定

第19回日本子ども家庭福祉学会 口頭発表

日本子ども家庭福祉学会「子ども家庭福祉学」への論文投稿

研究成果物