国際比較研究事業(平成28年度以前)

平成28年度

ソーシャルワーク新国際定義の地域における独自性検討のための基礎資料作成―特に、イスラム教とソーシャルワークについて

研究代表者氏名

社会福祉学部 教授 藤岡孝志

研究課題

ソーシャルワーク新国際定義の地域における独自性検討のための基礎資料作成―特に、イスラム教とソーシャルワークについて―

研究結果の概要

平成27年度国際共同研究「宗教とソーシャルワーク」の調査研究結果を踏まえ、本研究は財政・ソーシャルワーク実践事例・ソーシャルワーク教育カリキュラムという3点に焦点を絞り、イスラム教とソーシャルワークの関連性について調査を実施した。対象国はイスラム教徒が多いバングラデシュ・インドネシア、及び仏教徒が多い中にあってイスラム教信者地域を構成しているタイとした。

本研究では、以下の報告に基づき、議論を深めた。ハビブ・ラアマン氏(バングラデシュ)はイスラム教で定められている「ザカート(定めの喜捨)」のシステムと国家の福祉予算との関連性について調査報告した。ワンワディ・ポンポクシン氏(タイ)は、児童虐待・ドメスティック・バイオレンスの事例について、ソーシャルワーク専門職とイスラム教の関連性、及び子どもの社会福祉とイスラム教で規定されている子どもへの支援の比較を行った。また、アディ・ファハルディン氏(インドネシア)はインドネシア国内のイスラム教系ソーシャルワーク教育カリキュラムの宗教とソーシャルワークの可能性について報告した。平成27年度国際共同研究「宗教とソーシャルワーク」の調査研究結果を踏まえ、本研究は財政・ソーシャルワーク実践事例・ソーシャルワーク教育カリキュラムという3点に焦点を絞り、イスラム教とソーシャルワークの関連性について調査を実施した。対象国はイスラム教徒が多いバングラデシュ・インドネシア、及び仏教徒が多い中にあってイスラム教信者地域を構成しているタイとした。

本研究では、以下の報告に基づき、議論を深めた。ハビブ・ラアマン氏(バングラデシュ)はイスラム教で定められている「ザカート(定めの喜捨)」のシステムと国家の福祉予算との関連性について調査報告した。ワンワディ・ポンポクシン氏(タイ)は、児童虐待・ドメスティック・バイオレンスの事例について、ソーシャルワーク専門職とイスラム教の関連性、及び子どもの社会福祉とイスラム教で規定されている子どもへの支援の比較を行った。また、アディ・ファハルディン氏(インドネシア)はインドネシア国内のイスラム教系ソーシャルワーク教育カリキュラムの宗教とソーシャルワークの可能性について報告した。

当研究所が過去に実施した国際共同研究事業(ソーシャルワーク教育の国際化、現地化の歴史およびソーシャルワーク教育連盟の地域組織化に関する研究)で導き出した「世界のソーシャルワークの主流である西欧ルーツの専門職ソーシャルワークはイスラム教国の人びとの生活実情に必ずしも合致しているわけではない」という仮説的結論について、政教分離が進む主流派ソーシャルワークの視点が人びとの生活と宗教が密接に絡み合い不可分であるイスラム教徒の視点と異なることがその原因のひとつである可能性が見出された。一方でソーシャルワーク教育においては専門職によるソーシャルワーク教育を志向する報告者たちにより主流派ソーシャルワークへの親和性が強く、「イスラムか西欧か」という二項対立によるソーシャルワーク議論が無為であるという新たな仮説も見出された。

本年度の研究を通じ、様々な文化的・宗教的・民族的背景を持つ人々が"ソーシャルワーク"と呼称する行為とは何か、(西欧ルーツの)主流派ソーシャルワークと異なる点・思想を明らかにするため調査研究を通じた対話の必要性が示唆された。

研究成果の活用・提供予定

研究成果の一部は、2016年12月に行われた環太平洋社会福祉セミナーにおいて発表され、多くの方々と議論を深めた。また、英文を主とする報告書を作成し、関係機関へと配布した。さらに、この英文報告書(一部、日本語での報告を含む)は、日本国内の社会福祉教育を実施する大学に提供するとともに、2017年9月に中国で実施されるアジア太平洋地域ソーシャルワーク会議(APRC2017)での配布、口頭発表のため事務局に提出予定である。

研究成果物

アジアにおける子どもの権利擁護の国際比較研究―子どもの貧困の現状とソーシャルワーク実践のあり方の検討

研究代表者氏名

社会福祉学部 教授 小原眞知子

研究課題

アジアにおける子どもの権利擁護の国際比較研究―子どもの貧困の現状とソーシャルワーク実践のあり方の検討

研究結果の概要

本調査は、子どもの貧困に関する概念整理を目的とする文献研究を行い、日本、韓国、フィリピン、マレーシア、インドの子どもの貧困の現状と、それに対する社会政策を各国協力者に依頼し、情報収集を行った。さらに、海外調査を行い情報収集、インタピュー誠査を通して分析を行った。これらを通じて、共通するソーシャルワークのあり方を検討した。方法は以下のとおりである。

  1. 子どもの貧困について概念・方法論研究―文献研究と通して概念整理、また先行研究レビューを行う。
  2. インド、フィリピン、バングラディシュ、タイ、インドネシアの子どもの貧困から生じている諸問題を資料、文献から整理し、共通項を抽出する。
  3. 上記の各国の子どもの貧困に対する社会政策を整理する
  4. 上記の①、②から研究枠組みを検討する。
  5. それぞれの国の研究者に依頼し、研究枠組みに則り、各国における子どもの貧困の現状を報告、二次的に生じている課題をまとめる。
  6. 海外視察を通して子どもの貧困に対する支援を行っている 団体・機関、専門家にインタピュー調査を行い、今後のソーシャルワークのあり方を検討する。
  7. アジア諸国における子どもの貧困から生じる課題に対するミクロ・メゾ・マクロ視点のソーシャルワークモデルの提示をする。

本調査では実際に韓国、フィリピン、マレーシア、インドの4カ国の調査ならびに日本を加えて5カ国の分析を行い、アジアにおける子どもの貧困の実態を把握した。これらは日本のソーシャルワーク実践にとって学ぶものが多くある。第1にソーシャルワークの地域連携のあり方である。第2に、政府や行政にソーシャルアクションを通して、国全体の政策に反映させる、または開発したプログラムを普及させることなど、ミクロ実践だけではなく、ミクロをメゾ、マクロとソーシャルワークを展開させていく方法は、非常に参考になる。 第3にソーシャルワーカーや関係者がNPOなどを立ち上げ、行政サービスでは不足している点を補うことを積極的に取り入れていることである。支援体制を構築するための財源の確保、子どもの貧困に関連するプログラム開発と普及、子どもの貧困の連鎖を断ち切る努力として、教育を受ける権利を保障する努力を行うことなど、非常に積極的な支援が行われていることは日本のソーシャルワークのあり方に多くの示唆を与えている。本調査を通して、自国だけでは解決できない子どもの貧困から生じる諸課題を、東南アジアのソーシャルワークの共通課題としてミクロからマクロを視野に入れた支援方法をこれらからの検討を続け、子どもの権利を擁護するソーシャルワーク支援基盤整備を引き続き検討する必要がある。

研究成果の活用・提供予定

  1. 報告書を作成し配布した。
  2. 2017年9月に行なわれる「2017年度 第24回アジア太平洋地域ソーシャルワーク会議 (中国・深セン)」
  3. 学内外の学会誌に投稿予定である。

研究成果物

ネパールの大地震被災地における身体障がい者の避難生活支援の実態調査

研究代表者氏名

社会福祉学部 教授 斉藤くるみ

研究課題

ネパールの大地震被災地における身体障がい者の避難生活支援の実態調査

研究結果の概要

一昨年大震災にみまわれたネパールのカトマンズの障がい者の被害状況を調査した。カトマンズの障がい者の学校(特別支援学校)と施設、ろう学校を訪問し、インタビューを行った。地震発生時、多くの障害者・児は何が起きたかわからず、大変動揺したが、教師や施設の職員に助けられた様子がよくわかった。レンガ造り等、地震に弱い建物が多く、人々は屋外でテント暮らしを余儀なくされた。遅々として進まない復興の中で、街の中心のテントはトイレの設備がなく、不衛生でだんだん暮らすことができなくなったとのことであった。一般の人はテントも足りず、ビニールなどを集めて自分たちでテントを作ったり、食料もなく、また家族と連絡がとれなかった人も多かったが、特別支援学校や施設はむしろ教師や職員の力で状況はよかった。現在はテントは撤去されているが、今尚インフラは整備されず、寺院・学校・施設の建物は修復されていない。雨が降ったら使えないような窓のないたてものや、茣蓙敷の教室もあった。

カトマンズ中央でさえ瓦礫はそのままで粉塵がひどく、マスクがなければとても歩けない。衛生状態は劣悪である。調査に向かった我々やボランティアで同行した学生たちも次々に体調を崩した。

ろう学校は山奥にあり、まったく整備されていない道路をカトマンズ中央からバスで6時間かけて到着した。学校と寮は極めて貧しく、子供たちの栄養状態は悪く、トイレも整備されておらず不衛生であったが、子どもたちは連帯感を持ってろうコミュニティーを作っていることが実感できた。日本手話とネパール手話を教え合うと生き生きとしてきて笑顔が見られた。

学校や施設はどこも寄付に頼っているようで、強く寄付を求めるし、外国人から寄付を獲得するためにはなりふりかまわない様子が感じられた。インフラの整備が進まない理由として、公費が次々賄賂として消えていくという実態がある。私立学校と公立学校を視察したが、格差は極めて大きく、貧富の差が大きいことは明らかであった。街には物乞いをする人々も多かった。

施設や学校にいる人たちについては貧しいながらもある程度守られているが、隠れた弱者はどのように暮らしているのか見えにくい。

公的な機関やソーシャルワーカーというものの存在は感じられず、一部の豊かな人たち以外はほとんどがコミュニティーの中の助け合いで生き延びてきた。カトマンズは出稼ぎや就学のために地方から来ている人が多く、彼らは戸籍のある場で支援を受けるべきという考え方が広まり、短期滞在者は差別されたという。カーストの名残もあり、人口の大半の貧困問題は深刻である。

研究成果の活用・提供予定

2017年日本社会事業大学社会福祉学会で一部を発表し、全容は紀要に報告する。また今後の学生のアジア研修や東日本大震災や熊本地震の被災地でのボランティアに活かす予定である。

研究成果物

アジアでの防災学習コミュニティの創生から福祉文化の醸成へ;パネルシアターによる教授法開発を通して

研究代表者氏名

社会福祉学部 教授 田村真広

研究課題

アジアでの防災学習コミュニティの創生から福祉文化の醸成へ;パネルシアターによる教授法開発を通して

研究結果の概要

カトマンズ市内の初等学校2校(私立と国立)を訪問し、1.パネルシアターの実演と制作 2.校長・教員との懇談 3.児童へのアンケートを実施した。

2校とも建物の被害はなかったことと、休校日の土曜日に起きたことから、直接的な被害は少ないように思われた。しかしながら、校区には瓦礫が残り、粉じんが常時舞い上がり、建築物は再建途上にあった。手つかずのままに放置されている箇所も少なくなかった。児童やその親族に犠牲者も出ていた。

私立学校には比較的裕福な階層から通学し、国立学校には貧困階層から通学していた。大震災は貧富の格差を広げていた。私立学校は〈インターナショナル・スクール〉を標榜し英語のみによる教育が施され、対照的に国立学校ではネパール語と英語で教育が行われ、委託費が現職教員分しか支給されない中で寄附やボランティアに頼っている現状だった。子どもや親の教育に賭ける期待は国・私立の別を問わず高かった。

パネルシアター作品は、ラポール(信頼醸成)・異文化交流・防災減災をテーマに用意・練習し、ネパール語への通訳を介して、学生との協同企画で実演した。

国立学校(tej binayak higher secondary school;madhu timilsina校長)には3月21日に訪問し、約90名を対象としてプログラムを実施した。

学生及び共同研究者・田中正代による異文化交流作品の実演のあと、田村が「災害救助犬レイラ」を実演した。3.11東日本大震災の救出活動に携わった救助犬を主人公にしたオリジナル作品で、ネパール地震との共通点から防災減災の教訓を児童に探究させる教材である。日本とネパールにおける教訓の相違点として判明したのは次の3点である。①日本では初期振動で机の下に隠れるのに対して、ネパールではレンガの重みを受け止める家具が普及していないこと、②よって、日本では屋内で待機するのに対して、ネパールでは即座に屋外の広場に避難すること、③日本では犬がつなぎ飼いであるのに対して、ネパールでは犬が放し飼いで震災直後に人に危害を加えた事例が多いことから、災害救助犬へのイメージが両国では逆転しうることが示唆された。これらの情報を参考にして教材内容を改訂することが今後の課題である。絵人形「パネタン」の制作と「わたしの宝物」発表を実施し、登壇した児童を表彰し記念品を贈呈し、プログラムは好評のうちに終了した。

研究成果の活用・提供予定

アンケートの集計結果と参画学生のレポート、教員へのインタビュー等を踏まえて、総合的な研究成果を公開する予定である。一つめは学内学会での口頭発表である。二つめは学内紀要への投稿である。三つめは開講科目「福祉教育論」等での活用である。さらに、災害ボランティアセンターでの活用、パネルシアター発表会での実演、学術学会での口頭発表も検討中である。

研究成果物

平成27年度

ソーシャルワーク新国際定義の地域における独自性検討のための基礎資料作成―特に、宗教とソーシャルワークについて―

研究代表者氏名

社会福祉学部 教授 藤岡孝志

研究課題

ソーシャルワーク新国際定義の地域における独自性検討のための基礎資料作成―特に、宗教とソーシャルワークについて―

研究結果の概要

本研究は日本社会事業大学と淑徳大学の共同研究である「宗教とソーシャルワーク」の第二ステージであり「イスラム教」に焦点をおきイスラム教が実施しているソーシャルワーク実践について調査記録したものである。対象国はイスラム教徒が大多数を占めるバングラデシュ・インドネシア・マレーシア及びイスラム教徒が少数派でありながら大きな影響力を持つタイ・フィリピンの5カ国である。調査方法としてはAPASWE会員のうち上記5カ国の会員校に上記テーマで調査参加者を公募した。途中平成27年12月開催の「環太平洋セミナー」で中間報告、1月末に最終報告が提出された。

今回の研究で各国のイスラム教が実施している様々なソーシャルワーク実践が報告され、イスラム教の宗教施設及び聖職者が人々の社会文化的なコミュニティの中心でありイスラム教徒にとって包括てきな生活の規範となっていることが報告された。またすべてのソーシャルワーク実践は神(アッラー)の意志により社会への責任として実施されていることも報告された。今回の研究は極めてプリミティブでありながらも実証データの記録である。イスラム教のソーシャルワーク実践は人々のライフスタイルに寄り添っており、西欧で生まれ育った「ソーシャルワーク」と似た実践も報告されている。一方でイスラム教のソーシャワーク実践は西欧とは異なる価値観(例えば社会正義)を持っており、また人々に西欧生まれのソーシャルワークと同じとは認識されていない。では「ソーシャルワーク」とは何か。本研究によりイスラム教をはじめとする様々な宗教をバックグラウンドに持つソーシャルワーク実践を理論化しその構成要素を抽出することにより「ソーシャルワーク」とは何かを明らかにしていくことの重要性が明らかになった。

研究成果の活用・提供予定

平成28年6月下旬に韓国・ソウルで開催されるJoint World Conference on Social Work, Education and Social Development 2016にて最終報告書を配布するとともにAPASWE会員にも郵送、ホームページでも公表する予定である。

また日本社会福祉学会及び日本ソーシャルワーク学会でも研究結果を口頭発表する予定である。

研究成果物

アジアの福祉に目を向けるソーシャルワーカーの育成へ~アジア・サービス・ラーニングプログラム

研究代表者氏名

社会福祉学部 教授 斉藤くるみ

研究課題

アジアの福祉に目を向けるソーシャルワーカーの育成へ~アジア・サービス・ラーニングプログラム

研究結果の概要

本研究は、サービス・ラーニングのプログラムをアジア地域のソーシャルワーク部門で実施し、国際コミュニケーション力を持つソーシャルワーカーの育成を図るとともにその効果を測るものである。本学の協定校の一つであるタマサート大学と共同して、教職員3名、ボランティア1名、学生7名でタイ北部を中心に2015年8月8日から8月18日までの10泊11日間のスタディツアーを実施し、その教育効果を評価すると共に、同地域の福祉事業の実態調査を行った。

出発前に参加学生7名に行ったアンケートを見てみると、参加学生7名中、タイへの渡航経験があるのは2名のみであるが、海外に強い関心を持つ学生が集まったといえる。特に海外における福祉の実地から学びに対する期待が寄せられた。また、日本においても海外(タイ)との結びつきを強く感じている学生が多く、近所のタイ料理屋や高校でタイ人同級生がいたなど、国際化する日本社会を反映する回答が寄せられた。

出発前に想定しているタイ及び東南アジアの社会状況については、「貧困」「HIV」「人身取引」「売買春」「不衛生」「低品質の福祉」などの授業において良く課題として提示される東南アジアの社会問題について回答してくれた。

しかし、海外においてソーシャルワーカーとしての活動ができると思うかという問いに対しては、1名を除く全員が「わからない」という回答であった。「具体的な知識やイメージがない」が多くの割合を占めた。また、日本人の活動が現地の人々に対する押し付けになってしまうことを恐れる回答もあり、海外の貢献に対しては慎重な態度を取っている。

研修により、学生の地域コミュニティを重視した福祉への関心度が高まり、海外での活動を身近に感じるようになる等の効果があった。(詳細は報告書参照。)

毎日、行うべきスケジュールが決定しているため、学生が体力を消耗し、ほとんどの学生が一度は体調を崩すことになった。ツアーの中でどのように休憩を組み込んでいくべきなのか、学生の自由に任せるべきか、計画に組み入れるべきかについては課題が残る。

研究成果の活用・提供予定

報告書を作成・配布するとともに、その要約を平成28年度日本社会事業大学研究紀要に発表する。

研究成果物

平成26年度

《発展途上国研究》ベトナム
宗教とソーシャルワーク;その異同と関係―仏教の場合

研究代表者氏名

日本社会事業大学アジア福祉創造センター 客員教授 秋元 樹

研究課題

《発展途上国研究》ベトナム
宗教とソーシャルワーク;その異同と関係―仏教の場合

研究結果の概要

本研究は、ベトナム国立社会人文科学大学と淑徳大学、本センターの3年にわたる共同研究として24年度にスタートした。今年度は最終年度にあたり、以下の活動のほか3年間の研究活動を報告書としてまとめた。

3月に南部のホーチミン、8月にホーチミンと中部のフエの現地調査
3月には淑徳大学において、12月にはベトナム国立人文科学大学ハノイにおいてワークショップ

淑徳大学は、現地でフィールド調査を実施した仏教寺院や僧侶が取り組む社会福祉的実践形態の類型化を試み、最終年度では、この調査を通じて窺える現状を分析し、ソーシャルワークの視点からの提案を加え研究成果としてまとめた。

また、ベトナム国立人文科学大学は3年間を通して共同研究に必要なバックグラウンドデータ・資料の提供および特に内面にフォーカスを当て独自に仏教のソーシャルワークへの貢献に関しての論文作成を行い、また、今年度ハノイワークショップでは、共同研究全体についての成果の討議、児童、老人、HIV/AID、心身障害者に対する援助・支援における仏教の役割の報告を行った。

本センターは、現地調査やワークショップ、結果分析の議論に参加貢献するとともに、両大学間の調整、現地調査・ワークショップ開催に対してのコーディネート、3者の研究報告、論文をまとめ年次報告書を作成した。

この共同研究は、ソーシャルワークを必要としている人々や問題に対して仏教はどのような活動をし、アプローチの方法をとっているか等の探究を通して、ソーシャルワークに対する仏教の貢献と限界を探ることをめざした。

研究成果の活用・提供予定

最終報告書が印刷され、研究参加者のほか、APASWE会員および日本社会福祉教育学校連盟会員に配布された。概要はホームページに掲載される。2015年タイ・バンコクで開催予定の国際会議においても提供を考えている。さらに、この3年間の成果はセンターが27年度に実施予定の「宗教とソーシャルワーク―イスラム教の場合」の計画、実施、分析のスタート台、参考として不可欠の役割を担う。

研究成果物

アジア太平洋地域ソーシャルワーク教育発展の歴史の中におけるソーシャルワーク地域連盟の生成と役割

研究代表者氏名

日本社会事業大学アジア福祉創造センター 客員教授 秋元 樹

研究課題

国際交流による聴覚障害者対応のソーシャルワークの確立をめざして

研究結果の概要

本研究はアジア太平洋ソーシャルワーク教育学校連盟(APASWE)の設立背景と展開の歴史について、公募で選ばれたアジア太平洋地域の8カ国におけるソーシャルワーク教育の歴史という文脈で整理した3年間の国際共同研究報告である。1年目(平成24年度)はバングラデシュ・インドネシア・マレーシア・ネパール・スリランカのソーシャルワーク教育の国際化の歴史について、2年目(平成25年度)は上記の国々に加えインド・フィリピン・タイについて、ソーシャルワーク教育の国際化と現地化(インディジナイゼイション)について各国の研究者が自国で調査研究を実施、論文が提出された。最終年である平成26年度は全ての論文を俯瞰し、APASWE設立の背景と展開の歴史を整理し、アジア太平洋地域のソーシャルワーク教育の展開の歴史と地域連盟の果たした役割について研究した。

3年間の国際共同研究を通じ、8カ国という限られた調査参加国ではあるが、ヨーロッパで生まれアメリカで醸成されたソーシャルワーク教育がアジア太平洋地域にある調査参加国に伝播した時から各国のソーシャルワーク教育の国際化と現地化は始まっておりAPASWEはその活動の核となる隔年会議開催や共同研究により西欧ソーシャルワーク教育を伝える役割(missionary)を担っていたという結論を得た。また本研究調査の参加者たちは、ソーシャルワークをプロフェションと捉える西欧ソーシャルワーク教育と各国の現実との摩擦があると報告しており、ソーシャルワーク教育の現地化について「ソーシャルワークを各国の現実・実情にあわせつつプロフェション化を目指すこと」と捉えていた。アジア太平洋地域におけるソーシャルワーク教育発展の歴史、ソーシャルワーク地域連盟の成長と役割について俯瞰的に捉えた本研究は、ソーシャルワーク世界定義にある地域レベル(Regional level)策定の途上にあるアジア太平洋地域全体ソーシャルワーク教育歴史研究の礎でありその意義は大きい。付け加えて本研究調査に参加したアジア太平洋地域のソーシャルワーク教育者・研究者を通じ地域レベルでの交流が活発化、本学が実施する国際共同研究への期待と本学の貢献がAPASWE会員に広く浸透したという効果も得た。

研究成果の活用・提供予定

報告書はAPASWE加盟校(283校)、過去2年間の共同研究参加者及び協力者(20名)に郵送するとともに、平成27年10月にタイ・バンコクで開催されるAPASWE会議参加者、平成27年度実施が計画されているプロジェクトの関係者・協力者にも配布する予定である。

研究成果物

アジアの大規模災害被災地における障がい者の避難生活支援の実態調査

研究代表者氏名

社会福祉学部 教授 斉藤くるみ

研究課題

アジアの大規模災害被災地における障がい者の避難生活支援の実態調査

研究結果の概要

本研究はこの防災、災害対応に対する国際的な流れを受け、アジアの大規模災害被災地での身体障がい者の避難生活の支援の状況調査を行うことを目的とする。

調査は2013年11月8日台風により多数の被害者を生み出したフィリピン・レイテ島で2014年8月4日から16日まで斉藤くるみ、西田昌之のメンバーで聞取り調査を行った。

現地ではフィリピン大学タクロバン校、フィリピン・アッシジ聖フランシスコ会デフセンター、タクロバン市福祉課の協力を受け、身体障がい者45名(内聴覚障がい者30名、視覚障がい者6名、その他身体障がい者9名)の聞取りを行うことができた。

その結果、ほとんどの障がい者は災害前に台風襲来の警告を受けながら、家族・親類の指示に依存し、避難行動をおこすことはなかった。また被災後の生活は、障がい者に対する配慮はほとんど見られない。支援情報の提供は、聴覚情報に頼るものであったため、十分な情報が提供されたとは言えず、家族・親類への過度の依存を強める結果となった。また、ろう者の中には支援物資の配給が十分に告知されなかった事例も見られた。

研究成果の活用・提供予定

  • 報告書による公表(『日本社会事業大学研究紀要』)
  • 報告書のフィリピン大学への提供
口頭発表
  • 西田昌之(2015)『聞こえない、見えない嵐~フィリピン・レイテ島における聴覚・視覚障がい被災者への聞き取りから~』国際基督教大学 アジア文化研究所 アジアンフォーラム 2015年4月14日

研究成果物

平成25年度

ソーシャルワークの第3ステージ、グローバルプロフェッション化に関する研究

研究代表者氏名

社会事業研究所 特任教授 秋元樹

研究課題

ソーシャルワークの第3ステージ、アジアにおけるソーシャルワーク教育の国際化及び現地化(インディジナイゼイション)に関する研究

研究結果の概要

本研究は平成23年度国際共同研究事業「ソーシャルワークの第3ステージ、グローバルプロフェション化に関する研究」の一環として実施した「アジアにおけるソーシャルワーク教育の国際化」の第2フェーズである。

本研究報告は2部構成になっている。第1部は2012年から実施されているソーシャルワーク教育の国際化」参加国における、ソーシャルワーク教育のIndigenizationの研究である。昨年度の研究に参加したバングラデシュ、インドネシア、マレーシア、ネパール、スリランカの5カ国7調査研究チームを選出し、各チームが本研究代表者によって設定されたガイドラインに沿って各国におけるソーシャルワーク教育の現地化(インディジナイゼイション)について調査した。第2部は上記の国々よりももっと早い時期(1930年代~40年代)にソーシャルワーク教育が導入されたインド、タイ、フィリピンについて対象を広げアジア地域におけるソーシャルワーク教育の国際化の歴史をより重層的に把握することを試みた。特に第二部に参加した国々は、アジア太平洋ソーシャルワーク教育連盟(APASWE)の設立に大きな影響を与えた人々の出身国である。この3カ国におけるソーシャルワーク教育の国際化を加えたことで、アジア地域の調査対象国において西欧から伝播したソーシャルワーク教育が国際化及び現地化していく過程がある程度明らかにすることができた点で本研究は意義深いものである。

ソーシャルワーク教育が導入された当時、調査対象各国は欧米のカリキュラムや教科書を活用していた。しかし利用しているソーシャルワークの教科書の書き手である欧米の研究者・著者と、それを学ぶ生徒や対象者は文化も民族も宗教も異なる人びとが多い。またソーシャルワーク教育が導入される以前の互助、相互扶助にたった「ソーシャルワーク同様の機能を持つ扶助・互助システム」の中でソーシャルワークがプロフェショナルな職業として認識されていなかった国もあった。

各調査報告からアジアにおけるソーシャルワーク教育の国際化が抱える「葛藤」について次の二つに分類することができる。まず第一に自分の所属しているアジアの社会で、ソーシャルワーカーがプロフェショナルな職業として認識されていないという葛藤である。第二に社会に出たソーシャルワーカーが、ソーシャルワーク教育で得た知識が現実社会にフィットしていないと感じる葛藤である。前者はソーシャルワーカーとしてのアイデンティティを確固たるものとするべく、それぞれの国でのプロフェション化(資格、認証制度)を押し進める原動力となった。後者は導入されたソーシャルワーク教育に各国独自の社会問題、宗教やその土地の生活に根付いた価値観に基づいた「ソーシャルワークのような扶助・互助システム」(例えばNGO)の活性化へとつながっていることが報告された。アジア地域におけるソーシャルワーク教育の現地化は、伝播以来連続する二つの葛藤が生み出した産物ともいえるだろう。

研究成果の活用・提供予定

APASWE加盟校に送付するとともに日本社会事業大学リポジトリ登録し成果の共有化を図っている。また、2014年7月にオーストラリア・メルボルンで予定されている国際会議で周知する予定である。

研究成果物

コミュニティベースの災害ソーシャルワーク人材育成

研究代表者氏名

社会事業研究所 特任准教授 山口幸夫

研究課題

コミュニティベースの災害ソーシャルワーク人材育成

研究結果の概要

災害に強いしなやかなコミュニティをつくるためにはコミュニティオーガナイズ・コミュニティデベロップメントが必要となるが、日本において社会福祉は法律に基づく対人援助に焦点化され、多様な福祉ニーズへの対応が不純分である。フィリピン等の先進的事例を学びコミュニティのリーダーと成員人材育成開発のための研究を行った。2013 Asia Pacific Social Work Conference Manila国際会議でのRoles of Social Workers in Community Based Disaster Management and Climate Change Mitigation and Adaptation共同ワークショップ,スリランカや東日本における行政主導の復興住宅プロジェクトの失敗について調査を行った。これらの国際討論、現地調査より復興支援活動は、現地の被災した人びと主体で行い、コミュニティそのものが活動し、主体的に関わり、管理できるような環境を整える、コミュニティの自助を強める原則で行わなければならないとの事例を集成した。

研究成果の活用・提供予定

本研究及び環太平洋ソーシャルワーク会議で形成された国際的ネットワークを活用し、フィリピン大学、インドネシア大学、東日本被災地のNGO、JICA等とコミュニティベースの防災人材育成セミナーを開催する予定。

事例研究をもとに研修の参考テキストとなる英文論文をまとめている。

Disaster Prevention and Managementに投稿予定している。

研究成果物

《福祉先進国研究》欧州の移民のソーシャルワーク 次世代の社会統合に向けて

研究代表者氏名

社会事業研究所 特任准教授 山口幸夫

研究課題

《福祉先進国研究》欧州の移民のソーシャルワーク 次世代の社会統合に向けて

研究結果の概要

ドイツにおいて移住者支援ソーシャルワークの政府及びNGOによる支援体制、人材育成、当事者団体のエンパワメントを中心に調査を行った。トルコ・クルド系移民の集住地区ベルリンのクロイツベルクにおいて定住化した移民当事者による社会統合のための取り組み。移住花嫁として、母親やコミュニティと離れ、ドイツに移住し子育てをする女性が孤立しないよう母子支援を行っている。その事例について、移住者のためのコミュニティー・センターのソーシャルワーカー、多文化幼稚園の園長等にヒアリングを行った。

日本の被災地における移住当事者の自助支援の形成への専門職の支援について、昨年度からの現地研究を考察し論文にまとめた。ドイツの知見を加え英文論文を作成している。

研究成果の活用・提供予定

山口幸夫 2013「被災三県における外国籍等市民当事者による支援システム構築」『居住福祉研究』 16号pp21-30

一般に日本においては移民支援は日本人支援者によって行われ、専門性が低い。本論文では実践事例をもとにNGOが移民当事者主体に移民の文化を共有できるソーシャルワーク専門職の必要性を啓蒙した。

英文論文についてはフィリピン大学ソーシャルワーク社会開発学院のジャーナルSOCIAL DEVELOPMENTに投稿を予定している。

研究成果物

《発展途上国研究》ベトナム
宗教とソーシャルワーク;その異同と関係―仏教の場合

研究代表者氏名

社会事業研究所 特任教授 秋元樹

研究課題

ベトナム
宗教とソーシャルワーク;その異同と関係―仏教の場合

研究結果の概要

本研究は、ベトナム国立社会人文科学大学と淑徳大学、本センターの3年にわたる共同研究として24年度にスタートしたものである。
日本側の研究は、6月と3月に南部ホーチミンにおいて十数か所の寺院と関連施設の調査を行い、ベトナム仏教寺院の提供するサービスの運営や方法について、24年度に研究成果としてまとめた類型化に沿って分析を行った。

ベトナム側の研究は、日本側の調査研究を踏まえて、「ベトナムのソーシャルワークにおける仏教の実践的及び精神的な特質」としてまとめられた。また共同研究の最終年度に向けて、日本、ベトナム其々から、「社会保障」について文献研究がまとめられた。

3月にはワークショップを開催し両者の意見交換をするとともに、最終年度に向けてこの共同研究の成果及び展望をどのような形でまとめ、今後の研究に繋ぐことができるか話し合いを行った。

ソーシャルワークを必要としている人々や問題に対して仏教はどのような活動をし、アプローチの方法をとっているか等の探究を通して、ソーシャルワークに対する仏教の貢献と限界を探ることをめざす。

研究成果の活用・提供予定

中間報告書が印刷され、研究参加者のほか、APASWE会員および日本社会福祉教育学校連盟会員に配布された。来年度以降の研究に対するインプットが期待される。なお概要はホームページに掲載される。
2014年オーストラリア・メルボルンで開催予定の国際会議においても提供を考えている。

研究成果物

平成24年度

ソーシャルワークの第3ステージ、グローバルプロフェッション化に関する研究

研究代表者氏名

社会事業研究所 特任教授 秋元樹

研究課題

ソーシャルワークの第3ステージ、グローバルプロフェッション化に関する研究

研究結果の概要

本研究は「ソーシャルワークの第3ステージ、グローバルプロフェション化に関する研究」の一環として、アジア太平洋ソーシャルワーク教育連盟(以下、APASWEとする。)加盟校より公募で選出された5カ国(バングラデシュ、インドネシア、マレーシア、スリランカ、ネパール)6名の参加者によって実施されたものである。本研究は特にアジアにおけるソーシャルワーク教育の国際化に着目し、研究代表者により作成されたガイドラインに沿って参加者が各国のソーシャルワーク教育の黎明期から2013年1月現在までの歴史、教育内容および各国のソーシャルワーク教育に影響を与えた要因や教育者等を調査した。

この調査を通じて参加各国のソーシャルワーク教育の歩みを整理するともに旧宗主国を始めとする西欧諸国および国際機関との関わりが一定程度明らかになった。またヨーロッパで生まれアメリカで醸成されたソーシャルワーク教育がアジアの各国に伝播するベクトルは二通りあることが示唆された。一つのベクトルは各国特有独自の文化伝統・生活様式にソーシャルワークの概念を照合・すり合わせる方向性(インディジナイズ)であり、もう一つは文化伝統・生活様式をソーシャルワークの概念に照合・すり合わせる方向性である。なおソーシャルワークのグローバルプロフェション化を目的とする本研究は、この二つのベクトルの是非について問わない。

今回参加した5つの国々の調査研究結果を通じ、さらに多くの国々を対象としてソーシャルワーク教育の史的事実を精緻に記録し、その伝播について分析する必要性が示唆された。

研究成果の活用・提供予定

国内外のAPASWE会員校に報告書を発送するとともに、平成25年6月にフィリピン・マニラで開催されるAPASWE/国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW(AP))によるアジア太平洋会議(APC22)において情報提供する予定である。また、APASWEのホームページでも情報提供し、希望者には報告書を提供する。昨年度の研究成果について情報公開することにより各国の研究者との連携を深めていく予定である。

研究成果物

国際交流による聴覚障害者対応のソーシャルワークの確立をめざして

研究代表者氏名

社会福祉学部 教授 斉藤くるみ

研究課題

国際交流による聴覚障害者対応のソーシャルワークの確立をめざして

研究結果の概要

聴覚障害者に関わるソーシャルワーカーに求められる力量について示唆を得ることを目的に、アメリカより池上真氏(P.A.Hartner Deaf Services ソーシャルワーカー、ギャロデット大学大学院卒)を招き、アメリカでの精神障害を持つろう・難聴者を対象にした支援経験に基づいた実践理論・技術の学習、事例検討会を開催した。

また音声日本語とは異なる日本手話を主な使用言語とする聴覚障害を持つ福祉従事者の養成にあたって、障壁となっている、社会福祉士・精神保健福祉士の国家試験の対策講座を昨年に引き続き開催し、参加者の意見をきいた。国家試験を受けようとする、または国家試験を受験したことがある聴覚障害者が言語的差異によって国家試験に受かりにくい、また国家試験対策講座に参加しづらい現状を把握しつつ、改善策を考えた。

一方英国のろう・難聴者に対するソーシャルワーク教育及び聴覚障害者に関わるソーシャルワーク実践に関する視察では、University of ManchesterでAlys Young教授をManchester Deaf CentreでKatharine Rogers氏をそれぞれ訪問した。University of Manchesterの博士課程で学んでいるろう者のソーシャルワーカー、Ros Hunt氏にインタビューし、Lancashire  Central Universityのデフスタディーズプログラム担当のClark Denmark氏、相良啓子氏も訪問した。さらにThe British Deaf AssociationとBritish Society for Mental Health and Deafnessを視察した。またUniversity of LondonのDeafness Cognition and Language Research CentreのDr. Tanya Denmark、Jenny Lu、Dr.Pamela Perniss、Eyasu Tamene氏をそれぞれ訪問した(高山)。

アメリカの障害学生支援専門職の団体であるAHEAD(Association on Higher Education And Disability)の開催するワークショップ(AHEAD Management Institute)にも参加し、アメリカの学生支援の方法を学ぶとともに、今後日本で体系的な教育を行っていくための示唆を得ることを目指した"The Institute for New and Newer Disability Resource/Services Managers"(講師:Jean Ashmore, AHEAD; Director Emeritus, Rice University、Carol Funckes, University of Arizona)を受講した(岡田)。

また、調査としては、わが国で、聴覚障害者に関わるソーシャルワーカーが支援の際に意識している専門的力量及び研修の必要性について明らかにするためにアンケート調査の分析を行った。全国の聴覚障害者支援施設職員や相談員を対象に、郵送式自記式アンケート調査を実施し、その結果をまとめた。

さらに福祉系大学に在籍し、ソーシャルワーカーを目指す聴覚障害学生の支援の現状について、アンケート調査を実施した。

研究成果の活用・提供予定

調査の結果も含めて、研究の成果すべてを報告書として、インターネットで公開する。

研究成果物

移住母子に対する災害リスク管理ソーシャルワーク

研究代表者氏名

社会事業研究所 特任准教授 山口幸夫

研究課題

移住母子に対する災害リスク管理ソーシャルワーク

研究結果の概要

本研究の目的は、散住地域の移住母子の災害リスクソーシャルワーク及び包括的な支援のあり方についての知見を得ることにある。その視点は当事者こそがそのニーズを知っている。"Nothing About Without Us" 私たちのいないところで私たちについて決めないで。外国籍等市民当事者主体の当事者によるの仲間のための支援づくりの仕組みの創造である。

このため被災三県における外国籍当事者が自らのストロンゲスと課題を母語で話し合う「被災外国籍等住民支援のための福島円卓会議」の開催を支援「後楽園円卓会議」を主催し、これらワークショップから移住母子を初めとした外国籍等市民のニーズと課題について知見を得た。当事者による団体はある程度形成されている、またその一部は高度な社会福祉的専門性をもつ専門職によって運営されている。一方日本の「当事者と支援者」の形は日本人が外国籍等市民の支援をする。舅姑と嫁婿のような関係が主流であったとの知見を得た、また外国籍等市民のエンパワメントをはかった。その詳細な結果は居住福祉研究へ論文として発表予定。

研究成果の活用・提供予定

厚生労働省の社会援護局の予算による社会的包摂サポートセンターの電話および同行支援による「よりそいホットライン」外国人専用ラインの運営に以下を寄与した。


☆『被災外国籍等住民支援のための福島円卓会議』(主催:社会的包摂サポートセンター、協力:アジア福祉創造センター)の企画・統括ファシリティエーターを務めた。

☆外国籍等市民のワークショップの分析から以下の提言を行い、災三県における外国籍等市民の自立支援のための改善を行った。
社会的包摂サポートセンター2013『被災外国籍等住民支援のための福島円卓会議』「福島円卓会議から得た外国語専門ラインの成果と課題について」

研究成果物

多文化ソーシャルワーク エスニシティグループへの支援

研究代表者氏名

社会事業研究所 特任准教授 山口幸夫

研究課題

多文化ソーシャルワーク エスニシティグループへの支援

研究結果の概要

交流人口 コミュニティとの絆による エスニックコミュニティとそのアイデンティティの継承発展

「従来型ではない多様な戦略について知見を得た」

ブリザードによる空港閉鎖など予定した一部のインタビューはできなかった。限られた時間では合ったが、キーパーソンとの関係構築ができ社会福祉開発における伝統芸能とエスニックコミュニティ研究の端緒となる知見を得た。

北米太鼓の3つのパイオニア・グループ、1サンフランシスコ太鼓道場、2緊那羅太鼓、3サンノゼ太鼓、3の流れを汲む和太鼓のリーダーと面談、アメリカにおける新規移民が少なく拡散していく日系、従来のコミュニティベースではなく広域に散住する個人の文化的アイデンティティ求めるニーズにどう対応するか。広い意味での和太鼓の戦略は物的地域の定住人口の集住によってコミュニティを維持する戦略が採れないため、一定の伝統行事による(お盆など)広域にすむ日系コミュニティの文化継承発展をとっている。また日系やアジア系でない、アートとしての和太鼓の活動による広範なアメリカ市民への普及・太鼓ブームも広い意味では日系の文化継承に寄与している。これらは伝統文化をささえる交流人口を増やす為の多様な戦略であった。(執筆中の書籍(東信堂)の一部として発表予定)

研究成果の活用・提供予定

大槌臼澤鹿子踊の伝統芸能を核とする復支援について

過疎地である被災地のコミュニティ継承発展について祭りには帰省する、故郷との絆をもちつづけ、それを希望の糧として大都市で仕事している。引退したらUターンして故郷で暮らす。また出身者でなくてもふるさととして地域貢献したい人々を引きつける。

福祉や観光産業も含め被災小都市が生き残りの復興をしていく上で参考となる知見を得た。

研究成果物

ベトナム
宗教とソーシャルワーク;その異同と関係―仏教の場合

研究代表者氏名

社会事業研究所 特任教授 秋元樹

研究課題

ベトナム
宗教とソーシャルワーク;その異同と関係―仏教の場合

研究結果の概要

本研究は、ベトナム国立社会人文科学大学と淑徳大学、本センターの3年にわたる共同研究として本年度にスタートしたものである(昨年度は準備年度)。今回報告はその初年度の中間報告である。

日本側の研究は、2回(7月、11月)のベトナム現地調査(6寺院と数カ所の関連施設訪問)により、ベトナム仏教寺院の提供するサービスの運営、方法について類型化の試みを行った。「直接支援施設運営型」「寺院セツルメント(隣保事業)型」等。

ベトナム側の研究は、主に文献研究により、「ベトナム仏教の歴史と社会における役割」「仏教とソーシャルワークの心理学的側面から見た類似性」「ベトナム仏教協会の慈善活動の概観」がまとめられた

8月にはワークショップを開催し両者の意見交換をするとともに、日本寺院、関連施設数カ所の訪問が行われた。

ソーシャルワークを必要としている人々や問題に対して仏教はどのような活動をし、アプローチの方法をとっているか等の探究を通して、ソーシャルワークに対する仏教の貢献と限界を探ることをめざす。

研究成果の活用・提供予定

中間報告者が印刷され、研究参加者のほか、APASWE会員および日本社会福祉教育学校連盟会員に配布された。

研究成果物

平成23年度

社会福祉人材養成校における国際ソーシャルワーク教育開発のための研究-アジア諸国のソーシャルワーカー養成大学の学術連携-

研究代表者氏名

社会事業研究所 特任教授 秋元樹

研究課題

社会福祉人材養成校における国際ソーシャルワーク教育開発のための研究-アジア諸国のソーシャルワーカー養成大学の学術連携-

研究結果の概要

  1. 7月に早稲田大学において開催されたAPASWE/IFSWによる第21回アジア太平洋ソーシャルワーク会議において、前年度本学において実施したソーシャルワーク国際定義再検討ワークショップの成果を問い、その内容を進化させ、さらに1月以降のIASSW/IFSWによる再検討プロセスにその成果を反映させた。国際定義の重層モデルの提案はその一つである。
  2. インドネシア、ベトナム、カンボジアほかの大学を訪問し、カリキュラム、人材、研究の交流の可能性を議論、検討。相手国からは、共同研究のほか、若手研究者の受け入れの要請が強い。

研究成果の活用・提供予定

  1. 定義に関しては、すでにその成果を『ソーシャルワーク国際定義の再検討―アジア・太平洋の声』(2012年1月)として公表済み。24年7月開催予定のストックホルム国際ソ-シャルワーク会議およびその後年末までの世界における議論にその成果は生かされる。
  2. 養成校との交流・協力についてはセンターの域を超え本学がどの程度具体的アクションをとるかに一重にかかっている。

研究成果物

国際交流による聴覚障害者対応のソーシャルワークの確立をめざして

研究代表者氏名

社会福祉学部 教授 斉藤くるみ

研究課題

国際交流による聴覚障害者対応のソーシャルワークの確立をめざして

研究結果の概要

聴覚障がい者に関わるソーシャルワーカーに求められる力量について示唆を得ることを目的に、アラバマ州精神保健局聴覚障がい者サービス部門責任者のスティーブ・ハマーディンガー先生を招いて、2011年8月5日にソーシャルワーカーや学生を主な参加者に迎えて、研修会を実施した。また、アラバマ州の聴覚障がい者に関わる対人専門職養成の取り組みについて、2011年11月に視察ならびに現地でのインタビュー調査を行った。その結果、アラバマ州では聴覚障がい者の精神保健福祉領域では、手話技能検定(SLPI)による5段階評定で4点以上の認定を受けないとダイレクトサービスができないことがわかった。手話によるダイレクトサービスが提供できない場合には、認定精神保健手話通訳者を依頼しなければならないとされている。ソーシャルワーカーも参加している認定精神保健手話通訳者養成が2012年8月に開催される予定であるため、さらに調査を継続して行く予定である。なお、2012年度はギャローデット大学ソーシャルワーク学部の教育カリキュラムについても調査する予定である。

音声日本語とは異なる日本手話を主な使用言語とする聴覚障害を持つ福祉従事者の養成にあたって、障壁となりうることの1つとして、国家試験があげられる。現状を把握するために、2011年12月に手話による国家試験対策講座及び聴覚障がい者福祉に関する入門講座を試行開講し、国家試験を受けようとする、または国家試験を受験したことがある聴覚障がい者が言語的差異によって国家試験に受かりにくい、また国家試験対策講座に参加しづらい現状を把握することができた。今後は、手話による国家試験対策等、聴覚障がい者でソーシャルワーカーを目指す者の支援のあり方について引き続き教材の開発を検討していく予定である。

また、わが国で、聴覚障がい者に関わるソーシャルワーカーが支援の際に意識している専門的力量及び研修の必要性について明らかにするために、2012年3月に、全国の聴覚障がい者支援施設職員や相談員を対象に、郵送式自記式アンケート調査を実施した。2012年4月30日時点で150件の回答があり、特にソーシャルワークに関する研修を求めていることがわかったため2012年度は研修教材の開発を検討していく予定である。

研究成果の活用・提供予定

学会などにおける報告及び電子書籍による報告書の作成を予定している。また研究成果を基に聴覚障がい者に関わるソーシャルワーカーの養成カリキュラムを検討していく予定である。

研究成果物

アジアにおける災害リスク管理ソーシャルワーク人材育成プログラム開発

研究代表者氏名

社会事業研究所 特任准教授 山口幸夫

研究課題

アジアにおける災害リスク管理ソーシャルワーク人材育成プログラム開発

研究結果の概要

東日本大震災のコミュニティを核とする復興支援のための人材育成のあり方について、以下の仮説からアクションリサーチを行い、実践と支援の課題について明らかにし、理論的分析を行った

  1. 地域の多様な文化、被災者当事者のエンパワメントが復興のカギ。
  2. ソーシャルキャピタルをもった立ち上がれる地域、先陣を切れるコミュニティの長所ストレングスをのばし、本来の力を発揮できるようにエンパワメントする。

臼澤鹿子踊保存会、まごころ広場うすざわ、遠野まごころネットと連携を強化し,大槌町および三陸の伝統芸能団体のネットワークの強化、伝統芸能の復興資金を得るため、ファンドレイジング、支援を行い三陸の伝統芸能の持つ無形文化財を越えたコミュニティの絆としての意義を広めた。

研究成果の活用・提供予定

成果を居住福祉研究に論文として発表するとともに釜石市の広報等に掲載して普及をはかった。

APC21,上海での国際会議、社会政策関連学会協会で口頭発表した。

書籍、ブックレットで成果の普及をはかるとともに、被災地域で後援等によって普及をはかる。

研究成果物

ベトナムソーシャルワーカー養成(途上国研究)

研究代表者氏名

社会事業研究所 特任教授 秋元樹

研究課題

ベトナムソーシャルワーカー養成(途上国研究)

研究結果の概要

本研究は24年度共同研究「宗教とソーシャルワーク―仏教の場合」に継続する2年プロジェクトの準備段階にあたる。

  1. 調査研究のデザイン(内容および方法)
  2. 共同研究の相手方University of Social Social Sciences & Humanities(国立社会人文科学大学)との検討
  3. 日本側カウンタ-パートの募集と決定(淑徳大学)
  4. ハノイにて両大学と調査研究発足に向けてシンポジウム・準備打ち合わせ、内容・方法・スケジュール等についての大枠の合意

研究成果の活用・提供予定

上記本年度成果は、24年度に本センターおよび上記2大学で共同研究が内容的に指導する礎となる。

両大学間の研究は合意により3年計画となるが、本センターの関与は現在のところ24年度末までとなる。

24年度末にはプロジェクトの2年間の成果を中間報告の形でまとめ発表する。

内容次第により印刷報告書して発行する。

研究成果物

欧州の交流協定校との国際共同研究(先進国研究)

研究代表者氏名

社会事業研究所 特任准教授 山口幸夫

研究課題

欧州の交流協定校との国際共同研究(先進国研究)

研究結果の概要

本年は先進国の文化的多様性に対応したソーシャルワーク教育について、この分野での大きな蓄積をもつオーストラリアとニュージーランドの協定校シドニー(ニュー・サウス・ウェールズ大学)および両国における主要なソーシャルワーク人材育成校であるメルボルン(ヴィクトリア大学)、 オークランド(マッセー大学とオークランド大学)において調査を行い、以下を明らかにした。

両国は移民国家として先住民族や多様なエスニック集団に対する人種差別主義的な政策や社会福祉サービスの反省から、多様な文化的ニーズに対応したソーシャルワーク教育を目指してきた。

そのソーシャルワーカー教育の主要な点は以下にあり、日本における国際的協定書に反映されているソーシャルワーカー人材育成における基本的人権、特に多様な文化尊重の学習アプローチについてもこれを参考とすべきである。

ソーシャルワーカーが 文化的な多様性に関する理解を深め自身の価値、信念、伝統、偏見に関する自己認識力を持つこと。

専門職としてだけではなく個人としても社会集団の一員としてもクライアントと意識的に関係構築をはかれる実践力をつけること。

研究成果の活用・提供予定

紙ベースの報告書を作成した。また学内学会等において発表し成果の普及をはかる予定である。

研究成果物

平成22年度

社会福祉人材養成校における国際ソーシャルワーク教育開発のための研究 

研究代表者氏名

社会事業研究所 特任教授 秋元樹

当事者による定住外国人の子ども支援

研究代表者氏名

社会福祉学部 特任准教授 藤本ヘレン

欧米の多文化ソーシャルワーク先進事例研究

研究代表者氏名

社会福祉学部 教授 八木ありさ