福祉教育教授技法・教材研究開発事業(令和4年度)

研究代表者氏名

小原 眞知子

研究課題

『COVID-19禍におけるICTを用いた多職種連携教育(IPE)の教材開発』

研究結果の概要

【研究の目的と意義】

COVID-19 の感染症以降、社会福祉の人材養成を行っている大学の現場では、確実にハイブリッド教育の普及が急速に進行した。ICT(Information and Communication Technology)を用いた授業は、利便性、効率性、効果性の検証がおこなわれるようになり、今後ますます普及、発展していくと思われる。これまで対面で実施されてきた多職種連携教育(IPE)は、近年のZoomなどを用いることになり、教員と学生、学生同士のインタラクションを促進させ、学生達が学部学科の専門領域を越えて効果的に学び合える環境をハード面とソフト面から模索することが急務である。
令和4年度に改定された医療系教育のモデルコアカリキュラムでは、多職種連携能力(IP) の養成が組み込まれており、「医療・保健・福祉・介護など患者・家族に関わる全ての人々の役割を理解し、お互いに良好な関係を築きながら、患者・家族・地域の課題を共有し、関わる人々と協働することができる。」また、社会における医療の役割の理解(Medicine in Society : SO)「医療は社会の一部であるという認識を持ち、経済的な観点・地域性の視点・国際的な視野なども持ちながら、公正な医療を提供し、健康の代弁者として公衆衛生の向上に努める。」という目的が掲げられている。2021年度は、学部・大学を越えてネット上で多分野の知識を組み合わせることにより、新しい知の創造を訓練する授業モデルの研究を試みた。研究方法は、社会福祉学をはじめ、医学・歯学・薬学・看護学・社会福祉学、法学、情報分野の学生を対象に、コロナ社会における課題に対して、実際的な解決策を提案・評価する「多職種連携型PBL授業」の授業デザイン、授業環境、授業運営等の詳細計画を研究するために、実際に実験授業に参加した学生、授業を企画運営した教員へのインタビューを実施し、利点や限界を確認した。その研究をもとに2022年度は、PBL(Problem Based Learning)を取り入れICT授業で用いる教材(事例・シナリオ)開発を行うために実験授業を実施し、HP上でオープンリソースとして公開することを目指した。尚、本研究は公益社団法人私立大学情報教育協会医療系フォーラム実験小員会と共同研究プロジェクトとして開発を行った。

共同研究

【本研究の達成目標】

PBLの授業をネット上で行うことを目指して、テーマの設定、到達目標、授業デザイン、授業環境、授業運営等を検討する場合、ICTを活用した多職種連携教育の具体的教材である。本研究では、教材開発を行い、多くの教員が活用できるよう、汎用性のあるものにする。

目標サイクル

【研究方法】

これまでの研究成果をまとめ、PBLを用いた具体的な教材開発を検討する上で、以下のことを検討した。

《1段階》
  • 大学、学部が異なり、対面したことがない学生間で、お互いの専門領域の垣根を超えた活発な討議を行うためには、ネット授業開始前にしっかりとアイスブレーキングなどを含めたモジュール検討。
  • 既存の知識の範囲や深さおよび視点が異なる様々な分野の学生たちの視野を広げ、理解を深めるために有識者のリソース講義を検討。
  • 社会の状況を反映した事例の選定のあり方を検討。今回は地域の高齢者の事例を取り上げて、多分野の学生が主体的に考え、社会的方策を検討できるものを選定。
《2段階》
  • オンライン上で分野横断型PBLを行うには、対面型以上にファシリテーター活用マニュアルの検討。
  • どこでも誰でも活用できるもの、すなわち授業ツールの汎用性を高めるために、学生マニュアルの検討。
  • 倫理的課題がクリアできるように対応策検討。

【研究成果】

コンテンツ設計を行い、ホームページにて公開する予定にしている。

【今後の課題】

以上の成果の普及に工夫が必要になることから他大学への周知広報を行う。

研究成果の活用・提供予定

  1.  本学学内雑誌の論文投稿の予定
  2. 2023年度日本医学教育学会シンポジウムで発表の予定
    2023年度日本保健医療福祉連携教育学会教育講演、及びシンポジウムにて発表予定

研究代表者氏名

田村 真広

研究課題

バリアフリーアクセシビリティ環境を創出する福祉教育としての「BF 情報保障」の開発

研究結果の概要

本研究チームは、視覚障害者・聴覚障害者のための大学教育・生涯学習に関する研究と試行授業等を行ってきた。多様な研究者・教育者・専門職の協力を得て、多角的な視点で情報アクセシビリティの問題点や教育内容の重点が明らかにした。視覚障害・聴覚障害当事者の研究者らは、健常者が大多数を占める研究が決定的に見落としていたものを指摘した。
分担研究者以外に研究協力者のネットワークを広げることができた。全盲の弁護士、ろう者の弁護士、全盲の画家、ろう者の画家、全盲のエンジニア、ろう者のエンジニア、全盲の文化人類学者、盲ろうの教育学者の面々である。
今後とも手話通訳士やPCテイカーのネットワーク及び支援学生グループとの協力関係を構築しつつ、挑戦的萌芽研究へ申請を行う。研究成果を学術学会等で報告し、各大学において試行授業などの事業を展開していく。

研究成果の活用・提供予定

本格的な研究へとつなげる準備段階として、聴覚障害者のための「情報保障」の授業を試行的にデザインしてきた。PCテイク、字幕の作成、視覚障害者のための文字のデータ化等々のスキルのトレーニング方法について研究と改善を進めた。
今後とも手話通訳士やPCテイカーのネットワーク及び支援学生グループとの協力関係を構築しつつ、挑戦的萌芽研究へ申請を行う。研究成果を学術学会等で報告し、各大学において試行授業などの事業を展開していく。