福祉教育教授技法・教材研究開発事業(平成28年度以前)

平成28年度

ソーシャルワーカー人材育成のためのプログラムの開発的研究

研究代表者氏名

社会福祉学部 准教授 木村容子

研究課題

ソーシャルワーカー人材育成のためのプログラムの開発的研究

研究結果の概要

本研究は、学生たちが専門職(ソーシャルワーカー)として成長していくにあたり、相談援助実習において体得することが目指される"コンピテンシー"(専門職・ソーシャルワーカーとしての力量)に焦点をあて、その獲得のために必要な要因について明らかにすることを目的としている。そこから得られた知見を踏まえ、相談援助実習および実習指導のプログラムを再構築、ひいては社会的に提案していくことを目指すものである。

以上のことから、実際に実習に取り組んだ学生たちにグループインタビューをおこない、「学生が考えるコンピテンシー」「厚生労働省が示している『相談援助実習の目標と内容』を踏まえた分析枠組み」「それらをいかに獲得もしくは体験したのか」という整理を行なった。

学生たちへのインタビューは、研究倫理に則り、学生・実習先いずれにも不利益が生じないよう、細心の注意を払った。詳細については、後日(2017年6月)報告することとし、本報告ではその概要を記すこととなる。

今回のインタビュー対象学生6名の実習先は多様で、生活施設、通所施設、行政機関などであった。利用者も、高齢者、児童、障がい者など、様々な状況である。

「学生自身が考えるコンピテンシー」については、以下の点に大別することができた。①信頼関係の構築や距離感などを含めた「利用者との関わり」に関するもの、②面接技術や支援計画・記録、および職場内外における連携を含む「ソーシャルワーカーの専門性」、③そのいずれにも関係する「コミュニケーション」、④考え方や利用者との向き合い方など、いわゆる「専門職としての価値・倫理」に関するもの。

これらは厚労省が示す『相談援助実習の目標と内容』の「基本的コミュニケーションと人間関係形成」「利用者ニーズ理解・支援計画」「多職種連携・チームアプローチ」「職業倫理、役割、責任」などの項目が非常に多く含まれていた。

学生自身がそれらの"コンピテンシー"をいかに獲得もしくは体験したと考えて(もしくは感じて)いるのか、という点については、「利用者との関わり」「実習指導者や職員との関わり」「同じ場にいることで、指導者や職員の対応を見聞きする」という部分がきわめて大きかった。それ自体は当然と言えるかも知れないが、インタビューから浮かび上がった詳細な状況は、今後の実習指導のあり方に示唆を与えてくれるものであった。

さらに「実際に体験する」ことで気づくことも多い。たとえば実習の終盤で「支援計画」を作成する場合があるが、その体験から、文章で示すことの難しさを知る。そして、「誰が見ても一目でわかるものを作成できるのが専門職であると理解した」という学生がいた。

「職場の会議への参加」「同行訪問」「同席面接」「職員との個別面談(スーパービジョンや質疑応答など)」など、様々な場面が明らかになった。

実習先の課題が社会の課題とつながっていることを実感し、さらに社会に目を向けるようになったという旨の発言、および「自己覚知」に関する話もあった。

研究成果の活用・提供予定

上記のとおり、2017年6月の報告書において、より詳細な分析結果の報告をおこなうとともに、学内で共有し、相談援助実習および実習指導の向上につなげていく。

学生が"コンピテンシーの獲得につながった"と考える場面等からプログラム再構築への示唆を得る。また、国が示す『目標と内容』には、学生たちの意識が高い項目とそれほど高くない項目があることが明らかになったが、その要因と効果的なプログラムを考えていく。

また、実習先や他の養成機関等とのさらなる共有の方法を工夫する。たとえば、配布が可能な資料を作成することや学習会を開催することなどが考えられる。その他の可能性もあるであろう。それにより、社会福祉専門職の育成における社会的な向上に貢献していきたい。

本研究としての一定の完結はあるものの、これからも実習教育に関する研究を様々な角度から続け、その向上・改善に取り組み続けていくこととする。

研究成果物

平成27年度

実習施設での実習生に対するスーパービジョン・モデル構築のための基礎的研究(Ⅰ)

研究代表者氏名

社会福祉学部 准教授 木村容子

研究課題

実習施設での実習生に対するスーパービジョン・モデル構築のための基礎的研究(Ⅰ)

研究結果の概要

本研究は、平成26年度~27年度「"相談援助実習におけるプログラム"の構築および運用方法と学生の学習効果に関する基礎的研究」の2年目の研究報告である。平成26年度から引き続き、社会福祉協議会および児童養護施設の実習指導者に対するグループインタビュー調査を行った。本調査は、効果的な実習プログラムの要素や運用方法(スーパービジョンとの関連等)を学生の学習効果との関連で明らかにすることを目的とした。

その結果、社会福祉協議会では、それぞれの有する資源(例えば、地域ネットワークにおける企画や会議、さらには障害者や高齢者関連の事業所など)を幅広く実習プログラムに取り込んでおり、さらにその幅広さゆえに学生側の主体的・積極的な参加がより求められ、実習先と学生との相互作用がより重要になってくることが分かった。

また児童養護施設では、体系化されたプログラムは実習過程全体を俯瞰する意味で必要不可欠であるものの、より重要なこととして実習生の自己覚知およびそれに対する個別指導の重要性が強調された。一方で、自己覚知を効果的に進めるためには実習生のレディネスを高める実習教育や個別指導の充実が不可欠であり、併せて養成校との連携が重要な課題として明らかになった。

研究成果の活用・提供予定

  • 報告書を本学実習先に配布する。
  • 実習指導者との学内での懇談会や研究会において調査結果をフィードバックしながら、より議論を深め、現場での実習プログラム、実習指導(SV)のあり方について整理する。

研究成果物

実習先での実習に対するスーパービジョン・モデル構築のための基礎的研究(Ⅱ)
―社会福祉相談援助実習現場における実習指導の現状と意識に関する調査―

研究代表者氏名

社会福祉学部 准教授 木村容子

研究課題

実習先での実習に対するスーパービジョン・モデル構築のための基礎的研究(Ⅱ)
―社会福祉相談援助実習現場における実習指導の現状と意識に関する調査―

研究成果物

平成26年度

知的障害教育福祉の文化を今後の福祉教育に繋ぐ―糸賀一雄生誕100年に向けて―

研究代表者氏名

社会福祉学部 准教授 蒲生俊宏

研究課題

知的障害教育福祉の文化を今後の福祉教育に繋ぐ―糸賀一雄生誕100年に向けて―

研究結果の概要

年度内に15回の研究調査を実施し、「一碧文庫」(旧糸賀邸史資料)1,110ファイルの確認、保存作業を完了した。

書簡については、作業の継続を予定している。

池田太郎ならびに田村一二関係史資料については、作業を開始する段階に留まった。今後の継続を予定している。

初期近江学園の保母による記録については、着手できなかった。

研究成果の活用・提供予定

研究成果については単独の報告書を作成し(平成27年3月)、学内の教員には配布済みである。

史資料を所有している社会福祉法人大木会には、平成27年度の早い時期に報告書を届け、「一碧文庫」の活用(公開・共同利用)に向けての検討を具体化してゆく予定である。

研究成果物

実習先施設機関との協働による実習支援フォーマットの作成に関する研究

研究代表者氏名

社会福祉学部 准教授 木村容子

研究課題

"相談援助実習におけるプログラム"の構築および運用方法と学生の学習効果に関する基礎的研究

研究結果の概要

本研究は、本学社会事業研究所福祉職支援開発ユニットと実習教育研究・研修センターとの協働により推進されている。昨年度まで実施されていた学内共同研究『実習先と構築する"相談援助実習におけるプログラム"の質の向上に関する研究』で明らかになった実習プログラムの実態を受け、より詳細に実習プログラムの構築および運用方法を精査するための調査である。昨年度の調査報告書において実習プログラム事例の掲載協力を得た実習指導職員を中心にインタビュー調査を行い、効果的な実習プログラムの要素や運用方法(スーパービジョンとの関連等)を学生の学習効果との関連で明らかにすることを目的とする。

さらに今回は以下の着眼点を重視する。実習プログラムは個々の学生の要望や能力等により柔軟に運営するべきではないか。具体的には学生の実習計画を可能な範囲でプログラムに反映したり、設定したプログラムのねらいと実習での体験との関係を学生が理解できるようフィードバックしたり、学生の頑張り、悩みなどを受け止め支持するといった、学生への関わり方が大きくかかわることが想定される。このような仮説をもとに、以下の点を調査目的とする。

  1. 実習プログラムを作成・運用するに当たり、学生の学習効果を高める工夫を明らかにする。
  2. 特にプログラムのねらいを実現するための効果的なスーパービジョンのあり方に焦点を当てる。

上記の研究課題のもと、実習先の種別ごとに数回に分けてそれぞれ8名程度の実習指導者の参加協力を得てグループインタビューを実施した。本研究は来年度も継続することを前提に、本年度については①特別養護老人ホーム、②障害福祉サービス事業の調査を実施した。

総合的な分析・考察等の取りまとめについては来年度示す予定であるが、今年度までで得られた知見を以下に示す。

【特別養護老人ホームでの実習プログラムに関して】

◇プログラムのねらい

ソーシャルワーク実践の実態が理解できるようにする(大学での学習と実態が結び付くように)〔B施設〕。

社福士としての心構えや、必要な視点の理解。〔E施設〕

利用者理解、実際の援助のあり方、アプローチを理解してもらう。〔A施設〕

生活相談員の業務が成り立っているのは、介護職や看護師など他の職種の働きのおかげであることを理解する。〔A施設〕

◇プログラム上の具体的な工夫。

3段階実習。前半で他職種の専門性を学んでもらい、後半でそれらを結びつけるソーシャルワーク業務を学んでもらう。〔B施設〕

実習計画書にある学びたい事柄に応じてプログラムを構成する。〔C施設〕

実践的な実習も取り入れる(例:行政に提出する書類の作成など)。〔A施設〕

個別支援計画作成実習において。

  • 学生でも使いやすいアセスメントシートを用意する。〔A施設〕
  • 実習生が作成した計画に関してなるべく修正をしないで済むように、情報収集の段階から細かく確認、修正をする。〔A施設〕
  • プランを実際に実践してもらう。実際にやり遂げることができて成果が得られた場合、実習生にとっても喜ばしいことであることが分かった。〔C施設〕
  • 介護にとらわれない"理想のケアプラン"を作成するよう伝える。〔G施設〕

最近は特養に関する学習が不足している実習生が多く、さらには介護実習と違い期間が短くかつ複数回の実習ではないので利用者とのコミュニケーションによる戸惑いが強い。その場合個別支援計画の作成まで至らない。それゆえ実習の目標を「自分なりにこの施設を説明できるようにする」と設定することがある。利用者や家族、職員への理解が中心。〔D施設〕

社会に新たに提案するようなテーマについて、インタビューやアンケート調査をしたうえで結果をまとめてもらうこともある。〔C施設〕

設定したプログラムを臨機応変に変更することもある。各職場から実習生に対して声がかかることがあるので(例:「今日は権利擁護に関する業務があるよ」)、学生の希望に応じて変更する。〔A施設〕

同法人内の地域包括支援センターやデイサービスなどでの実習をプログラムに組み入れる施設〔A・C施設〕もあれば、逆にあえてそれをせず1か所でじっくり学んでもらおうとする施設〔B施設〕もある。

短期間の他事業所での実習では、単なる体験にならないように面談を通してつながりを理解してもらうようにしている。〔C施設〕

実習生が自分でプログラムを作成する意識で臨むように伝えている。そのためにも自分の希望を積極的に発言させている。〔G施設〕

◇実習受け入れに関する法人全体の協力体制の構築が重要。その促進要因。

  • 会議等における実習受け入れに関する細やかな情報共有。〔A施設〕
  • 実習生からの意見(ポジティブ・ネガティブ関わらず)の各現場へのフィードバック。〔A施設〕
  • 実習プログラムの調整、特に実習生の受け入れ分担やスケジュールについて、パソコン上で各職場とやり取りしている。〔A施設〕

◇相談業務実習の難しさ。

トラブルなど実習生には見せられない場合もあり、なおかつその対応に追われ実習生まで手が回らないことがある。〔A施設〕

電話応対をそばで見てもらう。後ほど職員間の役割についてなど説明をするようにしている。〔A施設〕

◇プログラムに入れにくい要素

「権利擁護・エンパワメント・評価」〔A・B・C施設〕

「地域社会でのニーズキャッチ、社会資源の理解」の項目は、指導者自身の理解不足もあり取り入れにくい。〔A・B施設〕

「経営・サービス管理運営」〔C施設〕

◇養成校(大学)との連携

巡回指導の際に、実習指導に関わった他職種のスタッフも同席してもらい共有する。なお、普段から様々な職種のスタッフから実習生に対してコメントをもらうようにしている。〔A施設〕

◇実習生へのSVの工夫

実習生と同じ出身校のOB・OGに関わってもらい、フランクな質問を出しやすくしている。〔A施設〕

実習指導者だけでなく様々なスタッフがフィードバックするようにしている。〔A施設〕

実習終了時に実習生の写真とスタッフからの寄せ書きのあるカードを実習生に渡して、労をねぎらっている。〔A施設〕

実習前半の最後に前半を振り返り、不足している部分を後半に反映する。〔B施設〕

入所施設の意義、社会的な背景について、自宅での生活が難しくなるケースの実態や背景を共に考え、今でも入所施設のニーズがあることや地域社会の中での入所施設の役割、つながりを理解してもらうように伝えている。〔C施設〕

実習を終えた実習生が「この仕事は大変そうだ』だけで終わらないように、社会福祉士の仕事の魅力を伝えるようにしている。〔C施設〕

日々実習目標が行動予定にならないように、身につけたい考え方やスキル、姿勢などを設定するようにしているがなかなか難しい。〔D施設〕

ただ教科書に書いてあることと実態の比較をするのではなく、利用者とのかかわり等において自分の考えはどうであったのか、どう感情が動いたのかといった自己覚知を大切にするよう指導している。〔D施設〕

自己覚知に結びつくように、実習生には「なんで」と問いかけ続けてもらうように問いかけをしている。本当に自分が思ったのか、それとも単なる教科書等からの受け売りなのかがわかる。〔C施設〕

特養の社会福祉士のやっていることを一つ一つ教えていってあげて、実はそれに対応する形でソーシャルワーク実践であることを結びつけて教えてあげると、理解につながることがある。〔B施設〕

利用者とのコミュニケーションが、その後のどのようにつながっていくのか、なぜコミュニケーションをとるのか考えてもらい、説明をする。〔E施設〕

コミュニケーションに関する振り返りについては、バイステックの7原則、エンパワメント、ストレングスといった視点を用いている。〔F施設〕

職員では難しい、実習生ゆえに発見できる点もあるのでその旨を伝えて励ます。例えば、利用者のストレングスなど。〔F施設〕

◇SVの回数、やり方

まとまった時間はなかなか取れないが、フロアで誰にでも質問はしてもらっていいようにしている。その結果をその場で共有して、必要に応じてSVをする。〔C施設〕

1週間に1度、実習記録を見ながら振り返りをする。1~2時間程度。〔D施設〕

毎日13時~16時半。ほぼ実習指導者が担当するが、一部ケアマネなどの他職種や経営スタッフが担当することもある。毎日SVをやる中で利用者理解の視点等を指導していくと、後半に実践できるようになる傾向がSVの効果として見られる。〔B施設〕

【障害福祉サービス事業での実習プログラムに関して】

◇プログラムのねらい

利用者とのかかわりから何を学んだのか、SVを通して気づきを得られるようにする。特に利用者の内面的なニーズに気付けるように指導している。〔I施設〕

利用者の生活のしづらさ、生きづらさなどを共感しつつ、障害の特性について理解を深める。〔I施設〕

利用者が何に困っているか、何をしたいのかという疑問を少しずつ理解していくことが支援員としての面白さであり、それを追体験してもらう。そのために個別支援計画の作成をしてSVをする。〔I施設〕

一人の対象者にたくさんの事業所が関わっていることを理解できるよう、法人内の相談支援事業所やグループホームなどにもいってもらう。〔I施設〕

実習前にはぼんやりしている施設や利用者のイメージ、なぜこのような施設に通うのかといった意義などが、実習を通してより明確になり、この仕事に興味を持ってもらう。〔M施設〕

◇プログラム上の具体的な工夫。

実習中のSVについては様々な職員が関わるため、実習指導の標準化のために法人内で実習プログラミングシートを作成・共有している。〔I施設〕

時には利用者が実習を育ててくれると考えられるケースもある。〔I施設〕

実習生の理解には段階がある。最初は利用者に関する気づきの深まり。次に職員の行動に疑問を持ち始める。これはアセスメントの入り口となる気付き。ポジティブなフィードバックをしつつ、職員の行動の意図や様々な人の解釈があることを確認していく。そのころから実習生が気になる利用者に関するアセスメント情報を見せるようにしている。〔I施設〕

「経営。サービス管理運営」のことについてはサービス管理責任者に講義をお願いしている。「地域社会でのニーズキャッチ、社会資源の理解」については、資源を知っているだけでは支援はできないので伝えるのが難しい。相談支援事業所のスタッフ等に話してもらうこともある。〔I施設〕

実習プログラミングシートがある。それと日々の日程票をリンクさせて、実習指導者がプログラムの進行状況をチェックできるようにしている。さらにプログラムに沿ったに日々の目的を学生とも共有して、日々のSVではその狙いに照らして考察させる。〔L施設〕

利用者の生活背景や地域での生活を知ってもらうために、スポット的にグループホームまで同行したり、カンファレンスに参加してもらったりしている。家族状況も含め困難を抱える利用者にスポットを当て上記のような実習を組み込むことがある。〔I施設〕

学生の興味、関心に合わせた実習を経験させる。例えば特別支援学校の教員を目指している学生に、とある学校との会合に出席させたところ、そこの生徒がいずれこのような施設に通うというイメージがしっかりできて、より考察が深まった学生もいた。〔I施設〕

◇実習生へのSVの工夫

利用者と接する際には、支援者の立場として利用者をどう見るか、どう接するか考えることが重要。ただ漫然と接するだけにならないように、毎日の目的を必ず伝えるようにしている。〔I施設〕

職員会議で振り返りをするが、おそらく遠慮してしまって思うように質問できていないと思われる場合がある。その時には会議の後マンツーマンで実習生の思いを引き出す機会を設けている。23日間の実習中概ね10日間ほどそのような対応をしている。〔K施設〕

現場での実習生をなるべく見るようにして、実習生の行動に関してその理由、ねらいや考えたことをこちらから聞くようにしている。実習記録を見て同じように実習生の考えを引き出すようにもしている。複雑な思考を解きほぐしてあげることで学生の思考をより発展できるようにしている。〔K・L施設〕

プログラミングシートを反映した日程表に合わせて、毎日の学生の目標を決めたうえで、その目標を意識して振り返りをしている。〔L施設〕

◇SVの回数、やり方

できれば毎日。実際には週3回程度。事前に質問をまとめてもらうようにしている。〔I施設〕

◇実習生を受け入れるメリット

実習指導者としては実習生に日々の業務を伝えることを通して自分自身の整理にもつながっている。職員のスキルアップにつながる。〔I施設〕

現場では学問的な見方と疎遠になりがちだが、実習生とのやり取りの中で見直すことができる。〔J施設〕

◇実習受け入れに関する法人全体の協力体制について。

実習指導の標準化。プログラミングシートの全体での活用。〔I施設〕
生活介護事業、就労継続B型、それぞれで実習生を受け入れているが、指導者は2名ずつ、計4名配置するようにしている。その中でなるべく情報を共有してSVに生かしている。〔K施設〕

◇プログラムに入れにくい要素

「ア)基本的コミュニケーションと人間関係形成」、「イ)利用者ニーズ理解・支援計画」、「ウ)利用者・家族等との援助関係形成」に関する実習が中心。「カ)職業倫理、役割、責任」「キ)経営、サービス管理運営」「ク)地域社会でのニーズキャッチ、社会資源の理解」は実習に反映させるのが難しい。〔K施設〕

180時間で厚労省のガイドラインの要素をすべて入れ込むのはそもそも難しい。施設での実習だから学びやすいこと、具体的には利用者とのかかわりからの学びを大事にしている。

個別支援計画を立ててもらっても、モニタリングまでは難しい。プランを実行に移してみた結果に関してSVで評価、振り返りはしているが、さらに別のプランを検討するところまでは至らない。代わりに職員が作成したプランを事例として伝えている。〔I施設〕

◇養成校(大学)との連携

事前学習においては、なぜ実習に行くのかという目的意識、実習でどういうことを学ぶのかという問題意識を持てるように指導してほしい。〔L施設

以上

研究成果の活用・提供予定

引き続き来年度調査を進め、来年度に研究報告書を作成し、約200カ所ある実習先や学内関係者、研究協力者と共有する。効果的な実習プログラムのモデルを構築することにより、実際の社会福祉士実習教育に反映していくことを目指す。

研究成果物

平成25年度

日本患者同盟および朝日訴訟関係資料の目録作成とその概要把握

研究代表者氏名

社会事業研究所 教授 姫野孝雄

研究課題

日本患者同盟および朝日訴訟関係資料の概要目録作成と資料内容の概略把握

研究結果の概要

本研究の研究結果としては、当該資料の概要目録として「日本患者同盟(朝日訴訟関係含む)文書資料概要目録」をまとめると共に、その全体概要について解説した「解説/日本患者同盟(朝日訴訟関係含む)文書資料の全体概要」を添付した報告書を刊行した。

研究成果の活用・提供予定

本研究の成果として刊行した報告書は、社会事業研究所、本学図書館、本学教員の他、日本患者同盟、日本患者同盟関係者、社会事業史学会関係者、福祉系大学研究室、岡山朝日訴訟の会、東京アフターケア協会、医療関係団体などにも提供する予定である。

また、今後日本患者同盟会員や社会事業史学会会員などで報告書を希望する者には、本学図書館を経由して提供する予定である。

研究成果物

知的障害教育福祉の文化を今後の福祉教育に繋ぐ―糸賀一雄生誕100年に向けて―

研究代表者氏名

社会福祉学部 准教授 蒲生俊宏

研究課題

知的障害教育福祉の文化を今後の福祉教育に繋ぐ―糸賀一雄生誕100年に向けて―

研究結果の概要

平成25年度には、滋賀県、湖南市、鳥取県などにおいて、糸賀一雄生誕100年事業が実施された。また、平成26年4月には「一碧文庫(糸賀一雄関係史料保存庫)」が完成した。本研究の史資料の整理保存作業が、これらの企画や展示に寄与し、関係機関、関係者が史資料の整理保存についての認識を強め、共同利用に向けての意識の醸成を図りつつあることは大きな成果であると言えよう。

一碧文庫開設に伴う図書や史資料の移転(図書63箱・史資料15箱)を終了し、史資料の確認については書簡、その他につき並行して確認作業を続けている。一碧文庫の初展示にあっては、その一部を公開している。

研究成果の活用・提供予定

一碧文庫は、糸賀家が社会福祉法人大木会に寄託したものである。同文庫の史資料の整理保存は、一義的には同法人よりの依頼という形態となる。リスト化並びにデジタル化の作業が進行した段階においては、同法人との確認を元に、資料目次、資料集として公開し、可能であれば学習の素材として出版を予定したい。

研究成果物

実習先と構築する"相談援助実習におけるプログラム"の質の向上に関する研究

研究代表者氏名

福祉マネジメント研究科 教授 手島 陸久

研究課題

実習先と構築する"相談援助実習におけるプログラム"の質の向上に関する研究。

新カリキュラムスタートから5年経過したこともあり、実習受け入れ側の実態を明確にすることが今後の相談援助実習の質的向上に不可欠であると考えられる。そこで本研究は実習指導職員を対象としたアンケート調査を行い、実習プログラムの実態を明らかにすることを目的とした。

研究結果の概要

2009年度新カリキュラムがスタートして4年が経過する中で、ソーシャルワーク実習の位置づけが明確になり、その質の向上のために、実習指導におけるスーパービジョンや実習マネジメントについての概念形成や実習施設のとの連携のあり方について徐々に改善されつつあるが、未だ相談援助実習プログラムについては、具体的指導方法が明確にされないままである。学生が自ら考え行動できる効果的な実習指導のプログラムについて、2012年度は2回実習施設の指導職員のヒアリング調査を行った。その結果実習プログラムとして、①地域資源調査や福祉マップ作り、②面接や家庭訪問の体験、③利用者との関係形成やニーズ把握のアセスメント、④個別支援計画の作成、⑤個別支援計画の説明やケースカンファレンス(または地域ケア会議等)のロールプレイング、⑥介護予防教室などのイベント企画、⑦実習ノートの考察の深め方、⑧実習での学びの発表など多様な内容が把握された。しかし、実習指導は学生の個々の状況に応じても違い、学生の個別のニーズを上手に引き出したり、実践への振り返りが重要であるなど、プログラムだけでなく、スーパービジョンとマネジメントが密接に関わっていることも明らかになった。特に、理想の社会福祉士像の伝え方やスーパービジョンのあり方については、丁寧に日々の振り返りをして、実践の言語化や理論化を共にする姿勢が学生の学習意欲を刺激し、ソーシャルワーク実践の魅力を引き出していることが、2回の実習指導職員のグループヒアリング調査、学生の実習後アンケート調査の4年間の単純集計の調査結果から分析できた。そこから、大学における事前指導と事後指導の向上や帰校日指導・巡回指導との連動が重要であることが見えてきた。

さらに、3年間の3大学の学生の実習後アンケート調査結果比較から、本学の学生の実習の学びの中核は、「実習を通じて友達や仲間の大切さを実感していること」、「社会福祉士の価値や倫理を学ぶことができた」、「専門性や人間性を高めることができた」が抽出され、「福祉現場の給料など待遇・労働環境の悪さを嫌になった」という学生が非常に少ないことであり、厳しい実態の中でソーシャルワークの意義を学び、実践現場を創造・発展させていくことの魅力や変革していく可能性を見出していることが明らかになった。しかし、一方で三大学の共通した内容として利用者や職員とのコミュニケーションや関係形成を積極的にとることが難しい学生が少なくないこと、実習後ソーシャルワーカーとしての魅力が見いだせず、将来福祉現場で働く意欲が、「あまり思わない」、「全く思わない」と否定的に答えた学生が約35%~45%いるという深刻な実態(2012年度学生アンケート調査結果)が明らかになっており、魅力ある相談援助実習プログラムのモデル構築が喫緊の課題であることが明確になった。

3大学はそれぞれ、地域性、定員数、教員体制、養成校歴なども違うが、毎年の実習生の授業評価としての学生のアンケート調査結果の振り返りを通じて、教員の実習教育への改善の努力につながり、そうした教員の姿勢が学生の学習指導の効果に直結することが示唆された。また、実習指導者との共同研究の成果として指導職員の指導姿勢や実習指導プログラムの共有が新たな実習指導のプログラムの創造の展望へと広がり、実習教育の質の向上が図られていくことが示唆された。

研究成果の活用・提供予定

次年度は、実習生アンケートの自由記述の分析及び評価表・実習報告書・実習ノートの分析、実習生のインタビュー調査を行い、学生がどのような実習プログラムを求めているのか学生の実態を明らかにする。また、実習先アンケート調査を実施し、効果的な実習プログラムの収集をすると共に、その結果を実習先指導職員・実習生・教員で分析し、どのような実習プログラムが良いのか新しい相談援助実習モデル構築に向けて取り組み、報告書としてまとめ、実習先に提供していきたい。また、研究成果については社会福祉学会で発表し、広く意見を募り、よりよい相談援助実習モデルの構築に向けて努力していきたい。

研究成果物

平成24年度

日本患者同盟および朝日訴訟関係資料の目録作成とその概要把握

研究代表者氏名

社会福祉学部 教授 北島英治

研究課題

日本患者同盟および朝日訴訟関係資料の目録作成とその概要把握

研究結果の概要

本年度の研究結果としては、当該資料の「概要目録(大要)」の作成を行った。その内容を大別すれば、以下のようなものからなる。

  1. 日患同盟の決議機関関係資料 203ファイル
  2. 日患同盟の役員会関係資料  270ファイル
  3. 日患同盟の運動・活動・取組み関係資料 308ファイル
  4. 日患同盟本部・事務局関係資料 275ファイル
  5. 日患同盟本部刊行の機関紙誌関係 新聞:2045点、雑誌472点
  6. 加盟各支部、各患者会・自治会関係資料 706ファイル
  7. 朝日訴訟関係各種資料 324点、ほかに機関紙215点

注>ファイルとは、資料整理の基本単価である書類綴や書類束などのこと

研究成果の活用・提供予定

平成24年度と平成25年度2年間計画により実施した「日本患者同盟および朝日訴訟関係資料の目録作成とその概要把握」について、今年度は第1年目の中間報告として、第2年目に繋がる大枠と基礎部分に絞った研究成果を公表した。今回の研究成果は社会事業研究所の他、日本患者同盟関係者に中間報告書として提供した。

研究成果物

介護福祉実習教育プログラムのあり方についての研究

研究代表者氏名

社会福祉学部 准教授 佐々木由惠

研究課題

介護福祉実習教育プログラムのあり方についての研究

研究結果の概要

新カリキュラム移行後の教材の内容を検討し、効果的な学習を行うための分析とカリキュラムの工夫を考察した。また、学生の実習記録からは、プロセスレコードを分析し、学生の思考から不足している知識と技術を客観視し、今後のカリキュラムのあり方と各授業をどのように関連づけることが重要であるかを考察した。

その結果、各授業の中身を精査し、効果的な学習ができるように検討した上で授業内容を組んでいくことが重要であり、その活動は1回限りではなく、楽器、年度を単位としつつPDCAの過程展開及びIRを通じて不断の改革活動としていかなければならないことが示唆された。

研究成果の活用・提供予定

  • 本研究のひとつとして、介護福祉士養成のテキストを分析した結果、下記のような課題が明確となった。
    多くの科目で重複する内容が組み込まれており、今後は介護福祉系大学における専門性のあり方、大学教育としての質保障のあり方、教養教育と専門教育との関連性等を検討し、実習が効果的に行われるようなカリキュラムを総合的に検証することで高度専門職育成のための最適な方法を見出せる可能性が示唆された。
  • 実習教育の質を向上させるためには、実習指導者教育を丁寧に教育できる内容とシステムを作っていくことが重要であり、リカレント教育のひとつとして本大学が見本となるものを開発し実践していくことが役割のひとつである。

研究成果物

実習先と構築する"相談援助実習におけるプログラム"の質の向上に関する研究

研究代表者氏名

社会福祉学部 准教授 蒲生俊宏

研究課題

実習先と構築する"相談援助実習におけるプログラム"の質の向上に関する研究

研究結果の概要

2009年度新カリキュラムがスタートして4年が経過する中で、ソーシャルワーク実習の位置づけが明確になり、その質の向上のために、実習指導におけるスーパービジョンや実習マネジメントについての概念形成や実習施設のとの連携のあり方について徐々に改善されつつあるが、未だ相談援助実習プログラムについては、具体的指導方法が明確にされないままである。学生が自ら考え行動できる効果的な実習指導のプログラムについて、2012年度は2回実習施設の指導職員のヒアリング調査を行った。その結果実習プログラムとして、①地域資源調査や福祉マップ作り、②面接や家庭訪問の体験、③利用者との関係形成やニーズ把握のアセスメント、④個別支援計画の作成、⑤個別支援計画の説明やケースカンファレンス(または地域ケア会議等)のロールプレイング、⑥介護予防教室などのイベント企画、⑦実習ノートの考察の深め方、⑧実習での学びの発表など多様な内容が把握された。しかし、実習指導は学生の個々の状況に応じても違い、学生の個別のニーズを上手に引き出したり、実践への振り返りが重要であるなど、プログラムだけでなく、スーパービジョンとマネジメントが密接に関わっていることも明らかになった。特に、理想の社会福祉士像の伝え方やスーパービジョンのあり方については、丁寧に日々の振り返りをして、実践の言語化や理論化を共にする姿勢が学生の学習意欲を刺激し、ソーシャルワーク実践の魅力を引き出していることが、2回の実習指導職員のグループヒアリング調査、学生の実習後アンケート調査の4年間の単純集計の調査結果から分析できた。そこから、大学における事前指導と事後指導の向上や帰校日指導・巡回指導との連動が重要であることが見えてきた。

さらに、3年間の3大学の学生の実習後アンケート調査結果比較から、本学の学生の実習の学びの中核は、「実習を通じて友達や仲間の大切さを実感していること」、「社会福祉士の価値や倫理を学ぶことができた」、「専門性や人間性を高めることができた」が抽出され、「福祉現場の給料など待遇・労働環境の悪さを嫌になった」という学生が非常に少ないことであり、厳しい実態の中でソーシャルワークの意義を学び、実践現場を創造・発展させていくことの魅力や変革していく可能性を見出していることが明らかになった。しかし、一方で三大学の共通した内容として利用者や職員とのコミュニケーションや関係形成を積極的にとることが難しい学生が少なくないこと、実習後ソーシャルワーカーとしての魅力が見いだせず、将来福祉現場で働く意欲が、「あまり思わない」、「全く思わない」と否定的に答えた学生が約35%~45%いるという深刻な実態(2012年度学生アンケート調査結果)が明らかになっており、魅力ある相談援助実習プログラムのモデル構築が喫緊の課題であることが明確になった。

3大学はそれぞれ、地域性、定員数、教員体制、養成校歴なども違うが、毎年の実習生の授業評価としての学生のアンケート調査結果の振り返りを通じて、教員の実習教育への改善の努力につながり、そうした教員の姿勢が学生の学習指導の効果に直結することが示唆された。また、実習指導者との共同研究の成果として指導職員の指導姿勢や実習指導プログラムの共有が新たな実習指導のプログラムの創造の展望へと広がり、実習教育の質の向上が図られていくことが示唆された。

研究成果の活用・提供予定

次年度は、実習生アンケートの自由記述の分析及び評価表・実習報告書・実習ノートの分析、実習生のインタビュー調査を行い、学生がどのような実習プログラムを求めているのか学生の実態を明らかにする。また、実習先アンケート調査を実施し、効果的な実習プログラムの収集をすると共に、その結果を実習先指導職員・実習生・教員で分析し、どのような実習プログラムが良いのか新しい相談援助実習モデル構築に向けて取り組み、報告書としてまとめ、実習先に提供していきたい。また、研究成果については社会福祉学会で発表し、広く意見を募り、よりよい相談援助実習モデルの構築に向けて努力していきたい。

研究成果物

平成23年度

実習先と共に構築するスーパービジョンと実習マネジメントに関する研究― 一人ひとりの学生の主体性や実践力を育む相談援助実習をめざして ―

研究代表者氏名

社会福祉学部 准教授 蒲生俊宏

研究課題

実習先と共に構築するスーパービジョンと実習マネジメントに関する研究― 一人ひとりの学生の主体性や実践力を育む相談援助実習をめざして ―

研究結果の概要

本校における2009年・2010年度の相談援助実習についての学生アンケート結果を比較し、事前学習や巡回時の実習生の話の傾聴・スーパービジョンなどの教員の指導内容が向上していることや、実習先指導職員の意識が変わり、実習内容としての相談業務がしっかり位置づけられ、実習後の定期的な振り返りや実習記録のコメントが丁寧に記録され、社会福祉士の役割の理解が深まってきていることが明確になった。2010年度の三大学学生アンケート結果の比較からは、自己到達度の高い学生と極端に低い学生が二極化している実態が浮き彫りになり、全体として24%の学生が否定的回答をしていることが示され、その内12%の学生は問題を解決しないまま終え、深刻な実態があることが明らかになった。実習生の自由記述の分析を通じて、コミュニケーション力の低下、利用者との関係作りが難しい・記録の考察が深まらない、職員との関係悪化・意欲低下などの実態とその背景に実習の悪循環の構造があることが示された。一方、実習中大変なことがあった実習生でも指導職員との関係形成を図り、問題の解決ができれば、実習を通じて福祉現場への魅力が実感でき、自己の課題が明確になり、社会福祉士としての働く意欲が醸成されることがプロフィール曲線によるデータ解析より示唆された。さらに、養成校インタヴュー調査・実習先指導職員のインタヴュー調査及び実習報告会後の意見交換会の結果から、スーパービジョンとしての支持的機能を基盤とした教育的機能と管理的機能の向上が課題であり、具体的方法として養成校教員と実習先指導職員が連携したスーパービジョンと実習マネジメントの構築が重点課題であることが示された。

研究成果の活用・提供予定

2010年度及び2011年度の研究結果については、日本社会福祉学会報告を基にして共同研究報告書を作成した。

今後は2011年度の三大学アンケートの結果を加えて精査し、実習施設に報告書を配布すると共に、本研究結果をたたき台として実習先施設・機関の指導職員と連携して共同研究に取り組み、学生の実践力を高める相談援助実習での効果的なプログラム研究に発展させていきたい。

研究成果物

高大連結の視点に基づく福祉系高等学校のキャリア教育と職業教育に関する研究

研究代表者氏名

社会福祉学部 准教授 田村真広

研究課題

高大連結の視点に基づく福祉系高等学校のキャリア教育と職業教育に関する研究

研究結果の概要

士士法改正等により介護福祉士養成施設の再編が進んでいる。同時に福祉系高等学校でのキャリア教育と職業教育の多様化が進んでいる。全国969校を対象に調査票を送付し336校から回答を得た。これらをもとに「福祉教育に取り組んでいる高等学校」一覧表を作成し実態把握に努めた。

調査票集約と並行して、地域の福祉事情とキャリア教育とをリンクさせて高校存続を図る際の高大連結の条件について探索する現地調査(青森・沖縄)を行った。

研究成果の活用・提供予定

「福祉教育に取り組んでいる高等学校」一覧表は、高校からの許諾を得て、日本社会福祉教育学校連盟HPへの掲載を予定しており、これにより福祉教育を軸に据えた高大連結を促す。

全国福祉高等学校長会への情報提供を行うとともに、今後の福祉系高校における教育課程改善へ向けた基礎資料として有効活用する。地区別に開催される高校教員対象の研修会において、あるいは、日本社会福祉教育学校連盟主催の研修会において、収集した情報を有効活用して、キャリア教育を媒介とする高大連結を推進する一助とする。

研究成果物

介護福祉実習教育プログラムのあり方についての研究

研究代表者氏名

社会福祉学部 准教授 佐々木由惠

研究課題

介護福祉実習教育プログラムのあり方についての研究

研究結果の概要

本研究は、介護福祉士を養成する4年制大学として他校に示せる実習カリキュラムを試行することと、そのために実習周辺にどのような科目配置をすることが効果的であるのかを見出すことを目的としている。

1年目は、介護実習関連の先行研究の抽出と分析、10校の他大学の4年間のカリキュラムの比較検討、本大学介護福祉コースの学生の実習前後の不安因子の分析を調査した。また、実習指導者に対し、4年制の介護養成校に特記した実習指導の実態を聞き取り調査した。

その結果、実習指導者は、4年制大学教育における介護福祉養成実習であるという意識は全くなく、今後は教員と実習指導者と指導的介護福祉士養成のための実習の在り方を検討することが課題であることが示唆された。

10大学のカリキュラム比較検討からは、介護福祉士の資格と合わせてどのような資格を取らせるかにより、各大学でカリキュラムが大きく異なっていた。本大学がどのような介護福祉士を養成して行きたいかというビジョンを一層明確にし、次年度は本大学の役割と理念の明確にして検討を加えたい。

研究成果の活用・提供予定

本学が、4年制大学における介護福祉士養成校として他校にエビデンスのある実習の在り方や関連科目との相互性等を示す報告を、4年制大学介護養成協議会を通じて行う。

研究成果物

通信社会福祉課程新カリキュラムにおける巡回指導の役割と効果

研究代表者氏名

社会福祉学部 教授 高橋流里子

研究課題

通信社会福祉課程新カリキュラムにおける巡回指導の役割と効果

研究結果の概要

本学通信教育科社会福祉士課程2009年度と2010年度入学生で2011年10月までに相談援助実習を終了した実習生、実習施設・機関、巡回指導教員に対する郵送法アンケート調査及び両年度の実習巡回報告書の分析を行った。

週1回以上の巡回指導のメリットとして、実習生と実習指導者の関係形成の支援ができる可能性が高いこと。また、巡回指導教員と実習指導者が実習スーパービジョンの機能(「支持」、「管理」、「教育」)の分担・協働した指導の可能性が高いこと。さらに、実習指導者と巡回指導教員が協働した指導ができることにより実践者である実習指導者が現場実践を振り、その職務にもプラスの影響を与えていることも証明できた。教員や実習先施設機関の巡回の負担が気になったが、実習生は現場実習・実習指導に満足し、実習指導者、巡回指導教員の三者とも週1回以上の巡回指導に実習指導上のメリットがあると捉えたことが明らかになった。

敷き足同時に以下の課題も明らかになった。それらは巡回指導教員の質のばらつきが否めないので巡回指導教員の底上げと教育機関と実習先機関の実習指導体制に役割分担制になっているので指導の一貫性を確保する点の方策である

研究成果の活用・提供予定

  • 実習教育研究・研修センターにおける実習教育教材開発や実習巡回指導者の研修事業の内容の検討に活用できる。
  • 福祉系大学に活用の提供を呼びかける。

研究成果物

平成22年度

実習先と共に構築するスーパービジョンと実習マネジメントに関する研究― 一人ひとりの学生の主体性や実践力を育む相談援助実習をめざして ―

研究代表者氏名

社会福祉学部 准教授 蒲生俊宏

研究課題

実習先と共に構築するスーパービジョンと実習マネジメントに関する研究― 一人ひとりの学生の主体性や実践力を育む相談援助実習をめざして ―

研究結果の概要

本研究では、相談援助実習学生の変容の実態を学生のアンケート調査、養成校教員のインタビュー調査、実習先指導職員のヒアリング調査の結果から分析し、そこから相談援助実習教育におけるスーパービジョンや実習マネジメントのあり方を考察し、新たな視座を開発することを目的としている。

今年度においては、2010年度に行った3大学(北海道・関東・甲信越)の社会福祉士実習生のアンケート調査結果より、「実習後社会福祉士として働く意欲がわいた」という問いにたいして否定的な回答とした学生の特徴についてまとめ、悪循環の構造があることを明らかにした。また肯定的な回答をした学生の中で、負の因子をもちながら実習職員・教員のアドバイスや対応によって、実習や学習のモチベーションを高めた事例を分析し、学生が求めているスーパービジョンの方法として、支持的機能・教育的機能・管理的機能の三つが示された。特に多かったのは第一に支持的機能であり、話しやすい雰囲気や、不安や悩み・バーンアウトの対応など個別状況に合わせた励ましや積極的肯定が学生の自信につながり新しい気づきや発見を見出していることが明らかになった。

養成校教員(5校)のインタヴュー調査では、養成校教員のスーパービジョンの内容や実習マネジメントの体制について調査し、一覧にまとめた。現状としてはトラブル対応のマニュアルはなく、スーパービジョンの体制や指示系統・定例会議の位置づけが不明確である点が課題として示された。

実習先指導職員のグループヒアリング調査(14名)の結果としては、最近の学生の状況として、知識が不十分、目的が不明確、主体性が欠如、将来福祉分野に行く気がないなどの問題点が抽出された。スーパービジョンのスタンスとしては、ソーシャルワーカー養成として、第一に人間性の教育を基盤とし、第2に専門職養成であることが強調されていた。その方法としては、学生の希望を重視し、苦手な部分をサポートして、得意な部分を伸ばすという支持的機能が基盤となっていた。支持的機能・教育的機能・管理的機能のそれぞれを明確に区分することは難しく、3つの機能が有機的に融合してスーパービジョンが可能となることが調査結果より示され、それを基に相談援助実習生のストレングス支援モデル2を開発した。

研究成果の活用・提供予定

研究の成果は報告書という形で示したが、これをできる限り多くのソーシャルワーク関係者に配布することを考えている。

また、研究の過程においても上記四つの団体の代表者などを講師として招きシンポジウムを開催し、多領域ソーシャルワークの実践の可能性を市民活動から学ぶ機会を持つなどした。

本研究の成果が、ソーシャルワーク専門職の実践のあり方を問いかけるきっかけとなるよう、さまざまな機会をとらえて論じることとする。

「認知症高齢者に配慮した施設環境づくり支援プログラム」の全国レベルでの普及を目的とした実践研究に基づく教材開発

研究代表者氏名

社会福祉学部 教授 児玉桂子

研究課題

「認知症高齢者に配慮した施設環境づくり支援プログラム」の全国レベルでの普及を目的とした実践研究に基づく教材開発

研究結果の概要

研究Ⅰ:「認知症高齢者に配慮した施設環境づくり支援プログラム」に基づく施設環境づくりの実施と効果の評価

  1. 東京都内4施設(特養)で施設環境づくり支援プログラムを用いた介入研究を1年をかけて実施した。21年度は環境づくり前の評価を行ったが、本年は環境づくり後について、「多面的施設環境評価尺度」、「RHRFストレスチェックリスト」、「認知症高齢者の行動評価表」等で評価を行い、環境づくりの効果を明らかにした。環境づくりが、職員の認知症ケアへの気づきやスキルの向上、物理的環境の改善、職員や認知症高齢者のQOLの向上など多くの効果をもたらすことが確認された。ただし環境づくり直後の効果は限定的であり、高齢者が環境に馴染むまで継続的に評価する必要性が明らかになった。
  2. 熊本県における3施設(特養・グループホーム・小規模多機能)の環境づくりを支援した。特養における実践研究成果は熊本県施設研究発表会で銀賞を受賞した。
  3. 台湾国立雲林科技大学曽研究室が嘉義市にある2カ所のナーシングホームで実践した環境づくりを支援した。この実践研究成果も、台湾建築学会で受賞した。

研究Ⅱ:施設環境づくり実践研究成果に基づく教材開発

  1. これまでの蓄積してきた研究成果も加味して「PEAPに基づく認知症ケアのための施設環境づくり実践マニュアル」を中央法規から出版した。内容は環境づくりの手法に関する解説編と実践事例から構成される。
    (解説編)
    ステップごとに具体的な実践手法およびそのための思考やコミュニケーションを助ける多様な環境づくりツールを掲載した。
    (1)ステップ1:ケアと環境への気づきを高める
    (2)ステップ2:環境の課題を捉えて、目標を定める
    (3)ステップ3:環境づくりの計画を立てる
    (4)ステップ4:環境づくりを実施する
    (5)ステップ5:新しい環境を暮らしとケアに活かす
    (6)ステップ6:環境づくりを振り返る
    (実践編)
    特養/ショートステイ/グループホーム/デイサービス/老健/精神科病棟における実践事例を取り上げた
  2. 「認知症高齢者に配慮した施設環境づくり実践マニュアル(CD版)」の日本語版と英語版をナレーション付きで作成した。以下の6部構成であり、多くの視覚的資料を取り入れ、分かりやすい工夫を行った。
    (1)認知症高齢者に配慮した施設環境づくり支援プログラムとは
    (2)認知症高齢者への環境支援指針(PEAP日本版3)
    (3)キャプション評価法
    (4)ケア環境のインテリア
    (5)施設環境づくり事例1:職員の工夫による小規模な環境づくり
    (6)施設環境づくり事例2:従来型からユニットへ大規模な環境づくり

研究Ⅲ:開発した教材を用いた環境づくり教育・研修プログラムの開発と評価

  1. 現場の実践者向けに効果的な研修プログラムを開発して、練馬介護人材育成・研修センターにおいて、基礎研修(2回)とリーダー養成研修(6回)を実施した。
  2. 認知症介護実践者を対象に基礎研修プログラム(遠隔地における研修プログラム)を開発して、長野県上田市で実施した。今後も継続的に取り組んでいく予定である。
  3. 福祉環境支援法(専門職大学院・公開講座)における講義で、2日間の集中かつ多様な受講者向けのプログラムを開発した。
  4. 学部介護福祉コース家政学住居(講義・演習)において、環境づくりプログラムの一部を適用して、学生が高齢者施設の環境アセスメントを行い、それを現場にフィードバックする教育プログラムを実施した。

開発した教材が体系的に構成され、環境づくりを支援する多様な研修ツールが用意されている点などから、高い研修・教育効果が得られた。
研修を受講した多くが自施設で環境づくりを実践し、さらに地域で環境づくり研修を主催する例がみられた。

研究成果の活用・提供予定

  1. 「認知症ケアのための環境づくり実践マニュアル」に基づく連載を介護雑誌に1年間12回(おはよう21)掲載して、普及に努力。
  2. 広く視聴されている環境づくりHP(http://www.kankyozukuri.com)上に、成果を掲載。
  3. 認知症介護研究・研修センターの指導者研修等において、テキストに使用。認知症介護実践者研修の資料としても活用される。
  4. 自治体や専門職団体(練馬区、上田市、熊本市等)が実施した研修においてテキストに使用。
  5. 大学教育(専門職大学院、日本社会事業大学学部、有明医療大学等)においてテキストに使用または一部を使用。
  6. 福祉系大学図書館に提供。
  7. 日本建築学会、日本認知症ケア学会、国際デザイン学会(英語版)等の高齢者ケア専門家に提供。
  8. 認知症ケア環境づくりを実践する(したい)施設に提供。
  9. 研究成果は、日本建築学会、日本認知症ケア学会、国際環境デザイン学会等に論文発表の予定。

以上のように、実践マニュアルの出版と雑誌掲載により、急速な普及が見られる。

更正保護施設における実習の在り方に関する研究

研究代表者氏名

社会福祉学部 客員教授 御厨勝則

研究課題

更正保護施設における実習の在り方に関する研究

研究結果の概要

実習プログラムを網羅的に仮説として提示したが,更生保護施設の場合,あらかじめ体系的にプログラムを組むことは困難であり,適宜プログラムの中から実習項目を選択する方法を採らざるを得なかった。

その結果,プログラムの内容において妥当性を欠いたものはないが,被保護者を理解する上でのアプローチが不十分であったと思われる。その原因は,日中は就労している被保護者が揃うのは,夕刻以降になること,守秘義務を強調するがゆえに,ケース記録の閲覧や面接が消極的に運用されたことによるもので,今後,最も工夫を要する事項である。

実習対象学生が編入4年生で,「更生保護制度」の講義履修前であったことから事前学習が不備であり,実習体制として決して望ましくなかったが,本年度から学部3年前期に同科目が設定されたことは評価される。

更生保護施設に配置されている社会福祉士等の役割や児童ソーシャルワーク実習の実績を踏まえた考察は,今後の課題として残された。

研究成果の活用・提供予定

研究成果は,更生保護施設及び実習対象学生に提供し,今後の実習の内容及び方法の改善又は進展に資したい。提供先は次のとおりである。

  1. 実習先として登録している首都圏更生保護施設8か所等
  2. 更生保護施設を実習先として選択した学生
  3. 実習教育研究・研修センター教員及び更生保護施設に巡回指導に赴く教員
  4. その他(更生保護施設を実習先として登録している関係大学)

社会福祉実習教育における総合的な実習プログラムの作成及び教材開発に関する研究

研究代表者氏名

社会福祉学部 教授 高橋流里子

研究課題

社会福祉実習教育における総合的な実習プログラムの作成及び教材開発に関する研究

研究結果の概要

通信教育課程の受講生のうち2078名を対象とし、郵送法による自記式調査票を用い調査を行った(有効回答数693、回収率42.1%)。

調査の結果、卒業者の81%が社会福祉士国家試験に合格し、卒業生の87%が現在も福祉領域で活動していること、卒業生の8割以上が受講についてキャリアアップに役立ったと述べていること、通信教育科卒業後に職場において専門的、管理的立場に就く傾向や、新たに介護支援専門員、精神保健福祉士の資格を取得する傾向などがみられた。このことから、専門職の養成、福祉人材の定着と参入、キャリアアップ・キャリアパスへの貢献といった通信科の果たした役割が改めて確認された。

一方、卒業生の約7割は、研修に参加したいという学習意欲があるにも関わらず、全体の約半数には現状として研修の機会がないこと、学習の機会があった者でも1年に1回以下であるものが4割にのぼるなど、卒業生、福祉実践者にとっては研修の機会が十分にあるとは言い難い状況にあることがわかった。

研究成果の活用・提供予定

実習教育研究・研修センターにおける実践者向けの研修事業の内容の検討活用予定