周囲との協働に使命感を灯し、紡ぐ
Chapter 01
多方面との連携に注力
児童家庭支援センターのセンター長を務めています。就任してしばらくはファミリーソーシャルワーカー(家庭支援専門相談員)と兼務していましたが、昨年度から管理職の業務にウェイトを置くようになりました。
私の仕事は主に3つあります。1つ目はセンターの運営です。横浜市からの補助金を事業にどう活用すべきか検討しています。より良い取り組みを行うために、補助金を多く獲得する努力も欠かせません。また、法人内の他施設との合同会議に参加し、法人全体の運営についても考えます。
2つ目は外部機関との連携です。横浜市の方針で、児童家庭支援センターは区との連携に特に力を入れています。区役所のケースワーカーや保健師と共に、地域の子育て中の家庭の困りごとに対応します。また、学校や保育園など「悩みを抱えた家族に出会い、どう関わったらいいか」と困っている機関の相談に乗ることもあります。このように、地域の子どもや家庭に関わる機関全体で連携し、支援対象の家族が「見張られている」ではなく、「見守られている」という思いで安心して地域で生活していけることを目指します。また、一時保護から戻ってきた子どもや家族の支援など深刻なケースに関わることが多く、児童相談所や教育機関と連携を図ることも度々です。このような家族や他機関と関わるのは、主に私以外の相談員なので、今後は現場の声を集約し、より良い連携の仕組みができるよう、行政機関へ提言していくことも目指しています。
3つ目はスタッフの採用、育成、労務管理です。私たちが支援する家庭はそれぞれに異なる事情を抱えており、対処の方法も一通りではありません。正解のない不確実な状況下で、体、頭、心をフル活用するため、休息は欠かせないものです。「スタッフがきちんと休めているか、心身の状態は良好か」を常に気にかけ、一人ひとりが十分な休息を取れるよう、人員の充足に努めています。彼らが専門職として自立していき、自己管理できるようになることも大切だと思います。
このようにセンターの内外の人々と連携することで、地域の家庭支援に力を尽くすのが私の仕事です。
「察し、寄り添う」心を灯し、紡ぐ
Chapter 02
広い視野と柔軟性で 真に必要な支援を見抜く
仕事をする上で気を付けているのは、一般的な価値観だけで物事を判断しないこと。福祉の現場で働くうちに、子どもの虐待が起こる背景にはさまざまな要因があると気付いたからです。親自身も生い立ちが複雑だったり、心に傷を負っていたりするケースが多々あります。虐待は許されることではありませんが、起こった原因を掘り下げ、各家庭に合った支援を考えることが必要だと感じています。
こう考えられるようになったのは、大学で、障がいのある人々と垣根なく過ごせていたからかもしれません。車椅子を使っている友人、難聴の友人を時々サポートすることはありましたが、関係性はフラットで、配慮こそしても特別扱いはしませんでした。今ほど多様性という言葉が浸透していなかった時代にもかかわらず、ダイバーシティの進んでいた環境だったと思います。自分とは異なる背景を持った人々と自然に交われた経験は、私に広い視野と柔軟な考え方をもたらしてくれました。
連携の輪に希望を灯し、紡ぐ
Chapter 03
それこそが私を導く灯
管理職として目指すのは、児童家庭支援センターが地域において頼れる存在になることです。地域の方々の相談ごとに直接対応することはもちろん、適切な外部機関につないでいくことも大切だと考えます。目下の目標は、連携の輪を広げ、子ども食堂の経営者や元保育士の主婦の方々など、ユニークな地域住民や、支援団体とつながることです。彼らの自由な発想を生かし、横浜市全体の子育て支援の動きを活性化できればよいと考えています。
この仕事の醍醐味は人と協働する喜びにあります。支援対象の子どもやご家族はもちろん、一緒に問題解決に臨んだスタッフや行政の方々との出会い、彼らと悩みや喜びを共有した経験はかけがえのないものです。今後は後進の育成にも注力したいと考えています。
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日本社会事業大学の魅力は、少人数ならではのアットホームな雰囲気です。ここで得た交友関係は、卒業後も続いています。同期や先輩が活躍する姿には、いつも勇気付けられています。働くうちに学び直したいと考えた私に、大学院の先生を紹介し、ソーシャルワークを学ぶきっかけを与えてくれたのは大学時代の恩師でした。これからここで学ぶ皆さんにとって、人生のよりどころとなる出会いが見つかることを願っています。